国内銀行114行の3月期預貸率は66.47% 3月期では2011年以降で最低
2017年6月12日 08:56
2016年2月に日本銀行がマイナス金利を導入し、 2017年3月期決算が初の通期決算となった。東京商工リサーチによると国内銀行114行の2017年3月期の預貸率は、66.47%(前年同期67.59%)と3月期では調査を開始した2011年以降で最低を記録した。また、預金と貸出金の差額の預貸ギャップは前年同期(244兆円)より19兆円膨らみ、過去最大の263兆円に拡大した。
業態別では、マイナス金利導入で「地元密着型金融」を強める地銀・第二地銀の多くが預貸率上昇させているのに対し、大手銀行では預貸率を下げるケースが目立った。
預貸率は、預金残高に対する貸出残高の比率で、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つ。一般的に預貸率が100%を下回る状態は、貸出残高を上回って資金に余裕のあることを示す。
銀行114行の2017年3月期の単独決算ベースの預貸率は、66.47%(前年同期67.59%)で、前年同期を1.12ポイント下回った。2011年以降の3月期本決算での預貸率は、2011年が68.59%、12年68.40%、13年68.00%、14年67.90%、15年67.74%、16年67.59%と年々低下し、マイナス金利の導入で注目された17年は、調査を開始した2011年以降で最も低い比率となった。
114行の2017年3月期の総預金残高は前年同期比4.1%増だったのに対して、総貸出金残高は同2.4%増にとどまった。マイナス金利の導入で、コール市場なども金利が低下し相対的に利回りの高い預金に機関投資家の資金運用がシフトしたことも預金残高の伸びに影響した。
2017年3月期の「預貸ギャップ」(預金+譲渡性預金-貸出金)は、263兆6,597億1,600万円に膨らんだ。貸出金に対する預金の大幅超過が続いている。「預貸ギャップ」の拡大は、マイナス金利の導入後も伸び悩む銀行貸出を反映した格好となった。銀行貸出は、アパートローンを含めた不動産向けや医療・福祉、M&A(合併・買収)向けの増加が目立った。
114行のうち、前年同期より預貸率が上昇したのは75行(構成比65.7%、前年同期79行)で、前年同期より4行減った。伸び率トップは、山口銀行の7.05ポイント上昇(62.53→69.58%)。次いで、長崎銀行5.31ポイント上昇(91.00→96.31%)、東邦銀行4.28ポイント上昇(53.02→57.30%)、山陰合同銀行4.24ポイント上昇(67.10→71.34%)と続く。
山口銀行は、組織改編で審査部を廃止し事業性評価部を新設するなど、コンサルティング力の強化を図り貸出金を伸ばした。長崎銀行は住宅ローンなどの個人向け貸出を中心に貸出残高が増加した。東邦銀行は事業性貸出、個人ローン、公共貸出ともに増加した。
一方、前年同期より預貸率が低下したのは39行(構成比34.2%、前年同期35行)だった。預貸率の低下では、みずほ信託銀行の13.01ポイント低下(102.55→89.54%)を筆頭に、三菱東京UFJ銀行6.61ポイント低下(62.47→55.86%)、三菱UFJ信託銀行5.75ポイント低下(73.62→67.87%)、大分銀行3.96ポイント低下(65.12→61.16%)など、大手銀行が上位に入った。(編集担当:慶尾六郎)