上場のメーカー130社、18年3月期の想定為替が1ドル110円と105円に二分

2017年6月12日 09:03

 東京商工リサーチによると東証1部、2部上場のメーカー130社は、2018年3月期決算の期初想定為替レートが1ドル=110円と105円に二分されることがわかった。また、1年前の期初想定為替レートと比較すると、「円高」または「変更なし」に設定しているケースが目立った。上場メーカーは「円高」を想定しながら外国為替の動きを慎重に見守る姿勢を崩していないという。

 外国為替市場は、今後、トランプ政権が打ち出す保護主義的な政策によっては、振れ幅が大きくなる可能性を残している。円安の進行は、輸出関連の企業には業績押し上げの要因になるが、中小企業には輸入物価を押し上げ、コスト高を招く恐れがあり、業種や規模でも明暗が分かれる。為替相場の展開次第で、企業収益は大きく影響を受けるため、今後の推移が注目される。

 東京証券取引所1部、2部に上場するメーカー130社のうち、2018年3月期決算(本決算)の業績見通しの期初の対ドル想定レートは、最多が1ドル=110円の53社(構成比40.7%)だった。

 しかし、105円も47社(同36.1%)あり、二分された格好だ。この他では、108円が18社、100円が4社と続く。想定レートの最高値は100円、最安値は115円だった。

 1年前の期初想定為替レートとの比較は、2年連続で「110円」から変更していない「110円→110円」が24社(構成比18.4%)で最も多かった。次いで、「110円→105円」が17社、「110円→108円」が15社、2年連続105円の「105円→105円」が14社、「105円→110円」が7社だった。

 1年前より「円高」設定は54社(構成比41.5%)、「変更なし」が40社(同30.7%)、「円安」設定が20社(同15.3%)、前年同期の不明が16社で、「円高」設定が4割を占めた。

 輸出企業は1円の為替変動でも業績への影響が大きい。こうしたなかで、1年前と比べて「円高」または「変更なし」で想定する企業が多かった。これは地政学リスクなど先行きの不透明感の高まりを警戒し、企業が厳しい業績見通しを立てていることを示している。

 2016年のドル円相場は、年初は1ドル=120円付近の円安基調で始まり、6月に英国の国民投票で「EU脱退」派が過半数を占めると1ドル=99円台まで円高に振れた。その後、円高基調で進んだが、米国大統領選挙以降は一転して1ドル=118円台まで円安が進んだ。

 為替レートで円高を見込んでいた上場メーカー各社は、急速に進んだ円安で業績を押し上げられた。しかし、米国政府は保護主義的な姿勢を保ちながらも、なかなか具体的な経済政策が見えず、外国為替相場は円安・ドル高の勢いは薄れ、円高傾向をみせながら揺れ動いている。

 上場メーカー130社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した86社では、2018年3月期決算の業績見通しで期初想定レートは、1ユーロ=115円の38社(構成比44.1%)が最多だった。

 次いで、120円が17社、110円が11社と続き、想定レートの最高値は110円、最安値は121円だった。1年前の調査では1ユーロ=125円が最多で、ユーロでも円高を見込んでいる企業が多いことがわかったとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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