太古の温暖化でライチョウが激減していた?
2017年6月11日 07:56
1万年前から6,000年前にかけて、地球が温暖化した際に、立山(富山県)のニホンライチョウが激減し、その後生息数が回復していたとする研究を、富山大学の研究グループがまとめた。
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地球温暖化。今日、通常この言葉は産業革命期以降に起きた人為による(主には二酸化炭素の温室効果による)温暖化を指して用いられるが、そもそものことを言えば地球は人類文明の影響がなくても周期的に温暖化と寒冷化を繰り返している。1万年前に地球が温暖化したというのは、その前の時期に続いていた氷河期が終わったからである。
ライチョウはキジ目ライチョウ科ライチョウ属の鳥であり、ニホンライチョウはその亜種で、日本の固有種である。絶滅危惧種であり、国指定特別天然記念物で、富山・長野・岐阜県では県鳥にも指定されている。
さて、ニホンライチョウは、1万年ほど前からずっと個体数を減らし続けてきた、というのが従来の説であった。しかし、どうもそうではないのではないか、というのが今回の研究である。
研究グループは、300羽ほどのライチョウが生息すると見られている立山の、室堂平周辺でライチョウのふんを数年かけて採取。そのDNAを分析した。
すると、立山のライチョウは、大きく3つの遺伝子型のグループに分類されることが判明した。
そして、それらの遺伝的多様性は、約4,000年前に生じていたことが分かった。一般に、遺伝的多様性は、個体数が多いときに拡大する傾向がある。つまり、当時の立山では、ライチョウの数は増加傾向にあったと考えられるのである。
研究グループは、1万年前から6,000年前にかけ、地球が温暖化していた為に立山のライチョウは餌不足などが生じて激減、その後環境が再び変動したために増加に転じた、と結論付けている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)