手描きで原稿を仕上げるのは時代遅れ? 漫画家の制作環境とは

2017年6月4日 20:35

 漫画の制作現場もデジタル化が進んでいる。特定非営利活動法人NEWVERYマンナビ編集部が、漫画家250人に対して行ったアンケート調査によると、57.8%の漫画家が漫画制作の全てをデジタルツールにて行っていて、37.6%が一部のみデジタルツールを使って行っており、合わせると9割以上の漫画家が漫画の制作時にデジタルツールを活用していることがわかった。手描きなど全てアナログで行っている漫画家は4.6%と少数だ。

 工程別に見ると、「スクリーントーン」で96.0%、「ベタ・ホワイト」で94.0%、「カラーの色つけ」で93.6%の漫画家がデジタルツールを利用していると回答し、特に塗りやトーンなどの仕上げの段階でデジタルツールを活用していることがわかった。こうした作業は従来アシスタントが行っていたが、現在ではデジタルツールに置き換わっているようだ。

 主に使っているツールは「クリスタ(CLIP STUDIO PAINT)」が78.4%と最も多く、次いで「コミスタ(Comic Studio)」が12.7%、「フォトショップ(Photoshop)」が6.9%だった。

 漫画家がデジタルツールを導入したきっかけで、最も多いのは「コスト削減」で46.2%、次いで「スピードアップ」が42.6%、「品質向上/やり直しが効く」は19.5%と、「コスト削減」と「業務効率の改善」が大きな理由だ。確かにこれまでアシスタントが行っていた業務がデジタル化できれば、人件費の削減にもつながる。

 実際にデジタルツールを導入して得られたメリットとしては、「作業時間が短縮できた」が30.7%、「描き直しが楽」が26.3%、「コスト削減」が22.7%で、時間短縮が最も多い結果となった。実際に1作品あたりの作業時間数の削減は48.0%の漫画家が実感しているという。

 ただ、デジタルツールのデメリットとして、「アナログ同様に描けない」という回答が20.3%にのぼっている。手描きから移行した漫画家がデジタル化によって作業効率の改善は実現したものの、自分の持ち味や技術を発揮できないのではないかと懸念している傾向が強い。

やはり、手描きの漫画にはデジタルにはない温かみや迫力を感じる。今後、如何に手描きに近づけていくかがデジタルツールの課題であろう。(編集担当:久保田雄城)

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