深層学習で血液検査による軽度認知障害(MCI)の判定手法開発へ

2017年6月2日 07:19

 2014年の厚生労働省による発表によれば、全国65歳以上の高齢者における軽度認知症(MCI)の有病率は13%で、認知症の15%と合わせると65歳以上の約3人に1人がなんらかの認知機能障害を有していることになる。5年以内に約半数が認知症に移行するといわれるMCIでは早期治療が重要視されており、厚生労働省による「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」でも「早期診断・早期対応」の項目が設定されている。こうしたなか、日本大工学部は人工知能(AI)の深層学習(ディープラーニング)により、MCIを簡便かつ高精度で判定する新手法を開発した。従来、MCIの正確な判定には専門的な問診や画像診断などが必要だった。健康診断などでの簡易的な検査でMCIの発見ができれば、早期対応が可能となる。

 MCI判定の新手法ではディープラーニングによって、たんぱく質などの血液の成分と、認知症の進み具合の関連を解析し特徴量を抽出して学習した。得られたアルゴリズムをもとに受診者の血液データを解析し判定するとのこと。同手法では、健康診断での血液検査のデータのみを使って9割を超す確率でMCIが推定できる。高齢社会の課題である認知症のリスクを早期に発見し、症状悪化の予防につなげる。

 AIによる認知症判定では、コールセンター事業を手掛けるインフォデリバが、スマホによる歩行速度の計測から認知症の兆しを発見する機能を発表している。また、血液データは生体データのなかでもAIの有効活用が進められる分野で、世界的に健康状態やさまざまな疾患を診断する手段として画像診断技術やスマホ、試験紙などを用いた血液検査手法が開発されている。たとえば日本では、AI開発ベンチャーのプリファード・ネットワークスがわずかな血液による検査で、乳がんの早期発見精度を99%以上に高める技術を開発している。

 今回発表のMCI判定手法は、すでに特許出願中で、スマホ向けのアプリ開発も検討しているとのこと。スマホアプリでは個人の健診による血液検査結果からMCIの簡易判定が可能とのことで、同アプリのリリースでさらにMCIの判定が身近なものになると考えられる。(編集担当:久保田雄城)

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