東京ガス、燃料電池の発電効率を65%相当まで高める高効率化技術を開発

2017年5月28日 18:45

 燃料電池は、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換することが可能であり、燃料電池の中でも特に発電効率が高い固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、高効率発電技術として注目されている。家庭用や業務用に実用化されているSOFCシステムは、化石燃料の中でも炭素成分が少なく環境性が最も高い天然ガスを主成分とする都市ガスを燃料とし、45~60%LHV程度の発電効率を実現している。この発電効率は、現状の分散型電源としては最高効率ですが、低炭素社会の実現に向けてさらなる高効率化が望まれている。

 今回、東京ガス<9531>が、高い発電効率を特徴とするSOFCの発電効率をさらに向上させる技術を開発した。そして、5kW級の出力規模のホットボックスにおいてDC端発電効率73%LHV(AC発電効率※565%LHV相当)を実証した。5kW級の出力規模においてAC発電効率65%相当を確認したのは、世界で初めてだという。

 東京ガスが開発したSOFCの高効率化技術は、投入した燃料をより多く発電に利用するためのSOFCスタックの二段化技術と燃料再生技術の2つの技術と、少ない未利用燃料において熱自立する技術の、計3つの技術を組み合わせることにより、世界で初めて5kW級の出力規模にてAC発電効率65%相当を確認した。

 一般的なSOFCでは、劣化を防ぐために、投入した燃料の20%程度は発電に利用していなかった。この技術では、SOFCスタックを二段化し、一段目のSOFCスタックの発電後のガスを、一段目より必要とする燃料が少なくてもよい「小さな二段目のSOFCスタックの発電に再利用」することで、全体としては発電に利用する燃料を多くすることができ、発電効率の向上を可能にした。同時に、各段では30%の燃料を残すことで、劣化するリスクの低減を可能とした。

 

 一方、一段目のSOFCスタックの発電後のガスは、未利用の燃料ガスよりも、発電によって生成したH2OとCO2の濃度が高くなっており、そのままでは再利用できる量が限られる。この技術では、発電後のガスからH2OやCO2を除去してH2とCOの濃度を高める「燃料再生」を行うことで、二段目のSOFCスタックでも一段目と同程度の濃度の燃料ガスを発電に利用することができ、発電効率の向上を可能にした。

 また高温で作動するSOFCの発電には、ホットボックスを外部から加熱することなく、発電にともなうSOFCスタックの発熱と未利用の燃料ガスの燃焼熱により、必要な高温を維持する「熱自立」が必要。投入した燃料をより多く発電に利用すると、未利用燃料が少なくなり、熱自立に利用できる燃焼熱は減少する。この技術では、ホットボックス内の高温ガスを有効に利用する技術の開発や、ホットボックスを小型化して放熱を減らすことで、SOFCの高効率発電時においても熱自立できるようにした。

 今回、東京ガスにてこれらの技術を組み合わせたホットボックスによるSOFCの高効率化の原理実証を行い、世界で初めて5kW級の出力規模にてAC発電効率65%相当を確認した。(編集担当:慶尾六郎)

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