政府、AIの実証規制に新たな枠組みを検討 イノベーションの加速狙う

2017年5月28日 19:44

政府は12日開いた未来投資会議で成長戦略の骨子を発表。目玉として、革新的な事業育成のため一時的に法規制を適用しない新たな規制緩和「日本版レギュラトリー・サンドボックス(規制の砂場)」の創設を盛り込んだ。このほかにも、国際的なイノベーション競争を勝ち抜く人材力の抜本強化、公共データ開放によるデータ利活用基盤の構築、観光、スポーツの活性化を通じたローカルアベノミクス(地域経済活性化)推進を掲げた。また、日本の強みをいかせる戦略分野として、データ、人工知能(AI)を活用した医療・介護を通じた「健康寿命の延伸」などを提示している。骨子をもとに成長戦略の原案をまとめ、6月上旬に閣議決定する見通し。

 具体的なニーズの証明があってから制度を策定する従来の政策手法では、AIやビッグデータ活用のシステム開発が加速する世界情勢においては、国際的にも大きく遅れを取るとのリスクが指摘されていた。レギュラトリー・サンドボックスでは、企業の新規事業を社会実証として扱い、期間中に法規制に抵触しても是正を求めない。企業は当局側と事前に内容を相談し、期間中はモニタリングを受ける。同制度では社会実証を促し、法規制が想定しない分野のビジネス創出を支援するもの。企業に特例措置を認める経産省の「企業実証特例制度」があるが、企業側が自ら特例措置を考えなければならないため活用はあまり進んでいない。国家戦略特区など一部の地域では法規定が緩和されるが、特区と認定されるまで時間がかかることが課題となっている。

 英国やシンガポールなどでは、いち早くフィンテック分野を中心にレギュラトリー・サンドボックスが取り入れられ、イノベーションの加速が起こっている。さらには中国の深センにおいては、政府の干渉が少ないことが大きな要因となり、ハードウェア関連のイノベーション活動が活性化。世界の市場を牽引する存在に成長している。

 「第4次産業革命」の加速においては、フィンテックのみならず農林漁業や物流、建設業、医療や介護、自動運転といった分野で積極的に社会実証が行われる土壌形成が重要となり、レギュラトリー・サンドボックスの創設による効果が期待される。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事