近鉄、あべのハルカスで仮想地域通貨の社会実験、ブロックチェーン技術活用
2017年5月26日 16:55
近鉄グループホールディングス(近鉄)と三菱総合研究所(MRI)は25日、ブロックチェーン技術を活用した仮想地域通貨「近鉄ハルカスコイン」の社会実験を、9月1日よりあべのハルカスで実施すると発表した。今回の実験では、仮想地域通貨を発行するための新たなプラットフォームを構築するためのステップとして、技術的検証や社会実装に向けた課題の抽出することを目的としている。
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近鉄はグループの各事業の強化と、顧客や店舗の利便性向上を図るため、沿線活性化モデルの実現を目指している。その手段として仮想地域通貨の発行機能と、円や他の仮想通貨と交換できる取引機能を併せ持った仮想地域通貨を展開していく方針だ。自治体や他の企業との連携も視野に入れる。
MRIでは実験の成果をもとに、近鉄と共同でブロックチェーン技術に経済成長を促す仕組みを実装した、地域創生に貢献するイノベーションプラットフォームの確立を図る。将来的には近鉄沿線以外の自治体等にも積極的に提供する。
実施期間は9月1日から10月1日まで。実験参加者は近鉄グループカードKIPS会員から5,000名を募集し、年齢や性別などのセグメント別に抽選を行う。利用可能店舗は約200となる予定。商品購入時に、店舗のタブレット端末に表示されるORコードを、専用アプリを利用してスマートフォンで読み取り、「近鉄ハルカスコイン」を送金して決済を行う。実験参加者には現金5,000円に対して1万コインを発行、1コインは1円相当となる。6月15日から7月14日まで実験参加者を募集する。
ブロックチェーン技術とは、もともとはビットコインの基幹技術として発明された。一般的に現金などで決済を行う場合、銀行やカード会社などの第三者機関を通して行われる。この第三者機関が、例えば支払いをする人に残金や支払能力があることを確認する役割を担っている。しかしこのブロックチェーンでは、第三者機関の介在なしに買い手と売り手の直接取引を可能にし、複数のデータベースで整合性があるかや不正がないかを確認する。仮想通貨の場合、仮に残高を偽装して取引をしようとしても、残高が無いという記録がブロックチェーンのネットワーク上にあるため、取引が成立しない。
現在ではこのブロックチェーン技術は、ビットコインのような仮想通貨以外にも、第三者機関を介さずに取引する手段として応用・研究が進められている。(記事:高橋珠実・記事一覧を見る)