スーパーコンピュータによる津波被害推計システム、内閣府が採用

2017年5月25日 18:17

 東北大学、大阪大学、NEC、国際航業、エイツーが共同開発した「津波浸水・被害推計システム」が、内閣府の運営する「総合防災情報システム」の一機能として採用されることが明らかになった。

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 このシステムは実際に大地震が起こったときに起動する。つまり、システムそのものも震災に見舞われる可能性を考慮しなければならない。従って、仙台の東北大学と、大阪の大阪大学の2拠点に、NECのスーパーコンピュータである「SX-ACE」による、同一のシステムを構築。365日24時間の稼働を実現する。

 地震が発生すると、その震源や深度などから津波のシミュレーションを行い、被害を推計する。南海トラフ域での地震を想定、発生直後に総距離6,000キロメートルの太平洋沿岸全域の被害推計を、30分以内で演算する。このような高速度で津波被害の推計を行うシステムは、世界で初であるという。ちなみに、従来の手法では、この水準の計算にはスーパーコンピュータをもってしても数日かかるのが通常であったという。

 具体的な演算内容は、総延長6,000キロメートルの範囲を30メートルの格子に分け、浸水建物棟数などの被害を予測する。

 即時推定に使われるデータは、気象庁の震源情報公開データをはじめ、国土交通省地理院と東北大学大学院が共同開発したリアルタイムGNSS(Global Navigation Satellite Systems)の観測データによる地殻変動検知技術も用いられる。

 SX-ACEは、マルチコア型ベクトルCPU搭載、世界一のコア性能と世界一のコアメモリ帯域を有する新式のベクトル型スーパーコンピュータである。旧来のスカラ型並列コンピュータに比べ、少ないプロセッサ数でも複雑な科学技術計算を行える特徴を持つ。

 なお、システムの本運用開始は、2017年度後半の見通し。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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