「採用直結のインターン」は本当に学業を妨げるのか?
2017年5月23日 11:52
学生が企業で就業体験をするインターンシップのあり方を検討してきた文部科学省などの有識者会議が、「企業の採用活動に直結するインターンは認めない」とする結論をまとめたとの報道がありました。
この有識者会議は、どちらかといえばインターンシップを推進する立場という認識があったので調べてみると、正式名は「インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議」ということで、やはり基本的なスタンスは「推進」ということだと思います。
今回の報道に関して、この会の議事録などを見てみると、どうもこの“採用直結”というところがカギのようで、議論の骨子として
「就職・採用活動の早期化・長期化につながることは避けるべき」
「インターンシップが就職・採用活動そのものとして行われることのないようにする」
ということがうたわれていました。
原則5日間以上のプログラムを「単位型インターンシップ」として大学の単位として認めていくことを考えているようで、あくまで学業の一環として、逆に採用活動と結び付けられることをかなり警戒している様子がうかがえました。
学生の就職活動の早期化と長期化を助長し、学業を妨げるという理由のようです。
私は今まで長らく新卒採用の現場に関わってきましたが、インターンシップは活用の仕方次第でお互いのミスマッチが避けられる、重要な取り組みになり得ると思っています。
今は確かに会社説明会の一部としか思えない、名ばかりのインターンシップがありますから、それではミスマッチを減らす効果はあまりないでしょうし、もちろん純粋に就業体験だけをして、将来の職業選択の糧にするということはあるでしょう。
しかし、どうせやるならばもっと具体的、直接的に役立てたいと考えるのは、学生も企業も同じではないかと思います。それを無理やり切り離したり禁止したりしても、結局は水面下の裏の動きが増えるだけのことになってしまうでしょう。
かつての就職氷河期の頃、なかなか内定が出ずに長い期間苦労する学生たちを見ていた時には、長引く就職活動は問題が多いと思っていました。ただ、最近のような売り手市場の中で、正式には選考解禁前のこの時期に、すでに3人に1人は内定があるというような状況であれば、長期化する人がそこまで多くはならないでしょう。
また、俗に言われる青田買いや早期化も、そのこと自体私は悪いことだとは思いません。
例えば、学生時代のアルバイト先から、「卒業したらうちで働かない?」などと誘われる人がいると思います。ずいぶん早い時期から言われることもあるかもしれませんが、当事者同士が納得するならば、それは別に悪いことではありません。お互いをよく知っているということで、少なくとも初期段階でのミスマッチはありません。
そもそも早期化といっても、企業の立場で2年も3年も先の内定を出せるはずはなく、学生の立場でもそんな内定は承諾できるはずもありません。早まったとしても大学であれば3年生くらいまでのことで、なおかつ早く決まってしまえば、その後は学業に専念することができます。
さらに新卒採用のやり方も、少子化がどんどん進む中で今のような一括採用ができるのは、一部の大手企業に限られてくるだろうと思います。学生個々の都合で就職活動をする時期はまちまちになったり、それによって企業も通年採用に移行せざるを得なくなっていったりするのではないでしょうか。
議論の経緯を見ていて感じてしまうのは、どうも学校関係者と企業関係者の間で、お互いが自分たちの都合優先の話でせめぎ合っているようで、せっかくの議論が実態とそぐわないものになってしまわないかと心配になります。
ただし書きはあるにしても、「インターンシップを推進する会議」から「インターンシップは認めない」という言葉が出てきてしまうのは、あまりイメージがよろしくありません。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。