わずか580g、世界最小最軽量のガンマ線カメラを開発
2017年5月22日 08:19
大阪大学、早稲田大学、料理科学技術研究開発機構、浜松ホトニクス社らによる共同研究グループは、重量580グラム、世界最軽量のコンプトンカメラ(ガンマ線を可視化するカメラ)の開発に成功した。また、3種の異なる放射性薬剤の投与により、生きたマウスの3Dによる同時分子イメージングにも世界で初めて成功した。
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ガンマ線というのは、俗に放射能と称せられる(厳密には放射能というのは電磁波の種別ではなく電磁波を照射する能力のことであるが)、核分裂反応などによって放出される電磁波である。よく知られているように人体に有害であるが、ガン治療など、応用されている分野もあるし、そもそも、古くからよく知られたレントゲン、すなわちX線もガンマ線とよく似た(部分的には、共通する)電磁波でもある。
レントゲンはもっとも代表的でもっともよく知られまたもっとも広く活用されている放射線イメージングであるわけだが、一般的には2次元静止画像を基本とするものであって、エネルギー情報(つまり色のこと)を持たず、モノクロである。
PET(陽電子断層撮影)なども、ガンマ線を対象とするのであるが、やはり画像はモノクロのものしか得られない。
理想論をいえば、任意のエネルギーのガンマ線を可視化することができれば、生体内に多種のマーカーを投与して同時に情報を追跡することが可能になる。解析される情報量は劇的に増加する。言ってみれば、モノクロテレビしかない世界にカラーテレビが登場するようなものであるという。
そのために必要であったのは、コンプトンカメラだ。環境計測用に開発されたコンプトンカメラを高精度化し、世界最軽量、高解像度の医療用コンプトンカメラを新たに開発した。
これを利用し、生体マウスに異なる薬剤を投与したところ、ヨウ素は甲状腺、ストロンチウムは骨、亜鉛は肝臓などの臓器に広く取り込まれていくことが、高精度かつ短時間(2時間ほど)で明らかになったという。
この研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)