切断されたDNAを修復するメカニズムが解明 東大の研究

2017年5月22日 08:00

 これまでよく分かっていなかった、DNAが切断された際にそれを正確に修復する働きを、Ctf4というタンパク質が持っていることを、東大の研究グループが明らかにした。

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 よく知られているように、DNA(デオキシリボ核酸)は人体のうちにあってその設計図の機能を持つ物質であり、二重螺旋の構造を持つ。

 古くは、DNAは安定的な物質であると考えられていた。遺伝情報はごく稀に起こる複写ミス、すなわち「突然変異」によってのみ起こり、その突然変異の内容が生体にとって生存に有利な性質のものであった場合のみ、「進化」が起こる。これがDNAに関する古典理論(※古典といっても20世紀の話であるが)であった。

 進化の話は今回の主題と直接的には関係がないので脇へ置いておく。ともあれ、DNAというものは、実際にはもっとずっと簡単に壊れてしまい、正確な情報を維持できなくなる、ということがのちに明らかになった。たとえば、細胞の癌化も、遺伝子の損傷によって生じる、ということは広く知られるに至っている。

 そしてさらに、DNAは壊れやすいものであるから、壊れたDNAを修復するメカニズムももともと生体のうちに組み込まれている、ということも最近になって次々と明らかになっている。たとえば、外的な要因によってDNAが切断された場合、「相同組換え修復回路」というものが働いて、DNAは修復される。

 しかしDNAの切断は、外的な要因によってではなく、転写時のエラーによって生じることもある。DNAの複写時の切断を実験的に再現する手段が確立されていなかったため、この場合にも相同組換え修復回路が機能するものであろうと理論的に推測されるにとどまっていた。

 今回、研究グループは、このDNA複写時の切断を再現する環境を確立し、さまざまな実験を行った。結果、複写時のDNAの切断修復場面においては、未知の修復機構が機能していたことが明らかになり、またそれにはCtf4というタンパク質が深く関わっていたことが分かったのである。

 なお、研究の詳細は、Molecular Cellの2017年5月18日発行号に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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