『少年ジャンプ』200万部割れ、『約束のネバーランド』に見る連載漫画の変化

2017年5月18日 22:05

■『週刊少年ジャンプ』の売り上げが低迷
 5月16日に、日本雑誌協会が公表している印刷証明付き発行部数で『週刊少年ジャンプ』の1月から3月平均の印刷部数が1,915,000部であることがわかった。印刷証明付きの計算方法になってから、『週刊少年ジャンプ』が初めて200万部を割ってしまう結果となったが、その中でも好調な漫画に、『約束のネバーランド』がある。この作品は、従来のジャンプ作品とは毛色が違うものとなっている。

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■今と昔で変わっている読者層
 『週刊少年ジャンプ』は男性ならば一度は手に取って読んだことがあるだろう週刊雑誌だ。『ドラゴンボール』や『幽遊白書』、『聖闘士星矢』など数々の名作が連載されており、1994年12月には653万部もの部数を出していた。

 少年雑誌の絶対的王者であった『週刊少年ジャンプ』だが、現代では200万部を達成することも難しくなり、全盛期に比べれば3分の1程度まで売り上げが落ちている。これは『マガジン』や『サンデー』でも同じ傾向があり、それぞれ苦境を強いられている。

 売り上げの低迷には人気作品の連載終了もあるが、それ以上に読者層の変化が挙げられるだろう。『週刊少年ジャンプ』は「友情・努力・勝利」をテーマにした漫画が連載される傾向にあった。しかし、今ではその方程式に沿った漫画よりも、同紙で掲載されていた『いちご100%』のように恋愛要素が強い漫画も読まれる。現在連載している漫画を見ても、「友情・努力・勝利」に則らない漫画が増えつつある。

■『ジャンプ』では異色の漫画『約束のネバーランド』が好評
 現在の読者層の変化が顕著にみられるのは、『約束のネバーランド』だろう。この漫画は『週刊少年ジャンプ』としては異色で、まるで海外ドラマのような展開が話題となっている。

 『約束のネバーランド』は、孤児院にて生活するエマとノーマンがある秘密を知ってしまい、孤児院からの脱走を考えるのが主なストーリーである。孤児院から脱走するために自分たちの親といえる人物を出し抜くサスペンス部分の作り込みが凝っており、先の見えない展開で読者を惹きつけている。

 原作と漫画を描いている人が分かれており、原作の白井カイウ氏は無名の新人。その新人が300ページに渡るネーム原稿をいきなり集英社に持ち込み、編集者を驚かせたという。新人のためいきなり連載にこぎつけるのは難しかったが、持ち込まれた原稿に引き込まれたこともあり、3年の準備期間を経た後に連載がスタートすることになった。

 3年の準備期間があったこともあり、『約束のネバーランド』の完成度は非常に高いと評判だ。また、従来の『週刊少年ジャンプ』作品とは一線を画しているということで、瞬く間に話題作となった。今ではセンターカラーだけに止まらず巻頭カラーに抜擢される人気作だ。

■いい意味で読者層を裏切る漫画に期待
 『週刊少年ジャンプ』とは思えない『約束のネバーランド』だが、今の読者層からは一定の支持を集めつつある。同漫画のヒットを考えると、従来の『週刊少年ジャンプ』のような熱血系の作品が今後多数出てくるのは考えづらい。しかし、『約束のネバーランド』のような意外性のある作品の出現には期待できそうだ。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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