パナソニック、世界最高水準の顔照合技術を開発、AI事業の取り組み強化
2017年5月11日 12:10
パナソニックは10日、シンガポール国立大学との共同開発によって、世界最高水準の顔照合技術を開発したと発表した。人工知能(AI)のディープラーニングと誤りを抑制する類似度計算手法を組み合わせ、独自のアルゴリズムを構築したという。人間の目で判別が困難な左右90度近い横向きや照明の明暗が強い屋外、サングラスやマスクなどで顔の一部が隠れている状態でも、登録された顔と同一人物であるかの照合を行うことができる。
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従来の顔照合技術は、左右45度以上の向きや屋外の照明度合、一部顔が隠れている場合などに、照合に失敗するという課題を抱えていた。今回発表された技術ではこれらの問題を解決し精度を高めた。パナソニックの従来の技術と比較すると、照合性能を最大5倍に改善することに成功したという。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)によって公開されている公式評価レポートにおいて、世界最高水準の顔照合技術であると示されている。
利用されているディープラーニングとは、機械学習の手法の一つである。機械学習とは、人間がプログラムを作らずに機械が自ら学習しモデルを作る。しかしこれだけでは精度が低く、単純な判断しか下せない。ベースとなる単純な判断に、複数の処理を重ねて複雑な判断を行えるようにするのがディープラーニング(深層学習)だ。
今回開発された技術により、指名手配犯や万引き常習犯など、あらかじめ顔を登録しておいた要注意人物を自動的に検知し警備員の監視業務の負荷を軽減することが可能になる。今後商用化し、公共施設の監視や入場管理、出入国管理など、映像セキュリティや本人確認を必要とする分野に活用する。
パナソニックは1月に「パナソニック-産総研 先進型AI連携研究ラボ」を設立、4月には現在約100人程度のAI領域の技術者を5年以内に1,000人規模に増やす計画を公表し、AI技術を持った開発会社のM&Aも検討するなど、AI活用への取り組みを次々発表している。IoTやAIが注目される中、数百億円規模の事業創出を狙う。(記事:高橋珠実・記事一覧を見る)