運と偶然に左右されがちな自己キャリアには「許容」と「割り切り」を
2017年5月10日 15:08
最近発表されたある調査によると、新入社員が感じる入社前のイメージと実務とのギャップは「仕事内容や配属について」が全体の30.0%と最も多く、次いで「組織の特徴や社風について」が21.3%、「成長環境やキャリア開発について」が19.2%となっていたとのことです。
回答者のコメントを見ると、
「希望していた部署とはかけ離れた部署に配属された」
「平日休みで、週末や祝日には出勤の必要があるなど、勤務体系が特殊な部署があった」
「仕事に対する憧れだけで入社を決め、社内風土を調べずに入社した」
「歴史があって社内の平均年齢が高い企業だったので、新卒入社してもキャリアアップが難しい」
といった声がありました。
新卒の「七五三問題」 といわれ、大卒の新入社員であれば、入社3年以内に3割が辞めてしまうという実態がありますが、これは決して最近だけの傾向ではなく、20年以上前から同じような比率で推移しています。
ここから見ると、いま行われている新卒採用という枠組みの中では、確率的にはそれくらいのミスマッチが発生してしまうということでしょう。
この調査結果で、学生の意識と大きなギャップとなっているのは、「希望の会社に就職できても希望の仕事ができるとは限らない」「仕事の上で社内風土は意外に大きな要素である」ということです。
「必ずしも希望の仕事ができるとは限らない」というのは、企業で仕事をする限りは当たり前のことですし、これは入社を決めた学生も、それなりに理解していることだと思います。「社内風土」についても同じで、就職活動では多くの学生が重視しています。
ただ、いくら意識していたとしても、それを超えるようなギャップがあるということで、3年以内に3割辞めるという状況がコンスタントに続いてしまう状況の、一つの理由ではあるでしょう。
本来であれば、まだ社会人経験がなく理解が不足しがちな学生側より、経験豊富な企業側がギャップを縮める努力をするべきと思うのですが、実際にはなかなかそういう形にはなっていません。
やはり、企業からすれば優秀な学生に数多く入社してほしいですから、学生の希望の芽を摘むような話はしづらくなります。
多くの企業では、真面目に自社のことを理解してもらいたいと考えており、嘘をつくつもりも隠すつもりもないと思いますが、リアルな実態を理解させるところまでは達していないところがほとんどです。
社会の事情をよく知っている企業側が、さらに努力をすべきだと思いますし、実際に努力している企業も増えてきていますが、企業が人材獲得を競っている立場である限り、自分たちのすべてをさらけ出すことには、おのずと限界があるでしょう。
そうなると、やはり学生側でも、できるだけ多くのことを理解しようという努力が必要になります。
「配属の可能性がある職種の幅が、自分の許容範囲に収まるものなのか」「社内の風土や文化は自分の価値観と合っているのか」といったことは、より一層意識しておく必要があるでしょう。
では何をすればよいのかということは、なかなか難しいところがありますが、自分なりに調べられることはいろいろあります。
例えば、その会社の事業計画を見て今後力を入れる分野を確認したり、組織図と人員構成の情報を突き合わせたりすることができれば、どんな部門、職種に行く確率が高いのかといったことは何となく見えてきます。
社内風土であれば、例えば歴史がある会社の方が、一般的には上下関係がはっきりしていたり、保守的であったり、男社会の要素が強かったりしますし、平均年齢が高ければ高いなり、低ければ低いなり、その年齢なりの一般的な雰囲気はあります。伸び盛りの会社と成熟企業では、当然様子は違います。
業界特性、業績推移、社員数の増減といった情報を重ねていくと、そこで得られた仮説をもとに実態を確認することもできます。
もう一つできることとして、自分の想定範囲を広げておくということがあります。特にポテンシャルを見込まれている部分が大きい新入社員の場合、本人の思いとまったく違う処遇になることはありますから、あまり一つのことに思いが強すぎると、よけいにつらさを感じることとなります。
実際に企業の中で、自分の裁量が使えるようになるまでにはそれなりの時間が必要ですし、それまでは思い通りにならない比率の方が高いと思っていた方が正しいかもしれません。
そこでどうしても我慢できないとなれば、無理して我慢せずに転職した方が良い場合もあります。
確かに難しさはありますが、志望先の会社の様子は学生の立場でもできるだけ調べてほしいと思います。ただ、個人のキャリアというのは、運や偶然の要素に左右されることが多いこともまた事実です。
「まぁこんなもの」と許容する心の余裕と、それが無理なら転職も辞さないという割り切りの両方が必要ではないでしょうか。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。