サービス残業撲滅は、業務量と効率のセットで見直さなければ進まない
2017年5月8日 11:07
宅配便大手のヤマトHD、音楽大手のエイベックス、さらに関西電力でも労基署の是正勧告をきっかけに、見つかった未払い残業代を支払うとの報道がありました。関西電力では総額17億円、ヤマトHDでは総額190億円にも上ると発表されており、これを支払うとなると、一時的な業績低下は避けられないでしょう。
それと同時に、これほどの無償労働がなければ仕事がこなせない、業績が保てないということでもあり、ここで名前が出てきている大手企業よりも、中小企業の方がさらにそういう傾向が強いのではないかと思われます。
最近は残業時間の上限規制の話もあって、会社側はとにかく残業時間を減らせということを強く言うようになってきており、長時間労働の是正に意識が向き始めたのは良いことだろうと思っています。
ただ、問題なのは、労働時間に対するもう一方の課題である「業務量」の問題について、積極的に取り組もうという姿勢の企業が、まだまだ圧倒的に少ないということです。
多くの会社では業務効率を上げろというばかりで、量自体を減らすという話はあまり出されず、効率化についてもIT投資などで向上を図ろうというよりは、人の力に関する部分ばかりが言われています。
はっきり言って、仕事のやり方が何か画期的に変わりでもしない限り、効率も同じく変わることはなく、それが人の動き方頼りでは、なおさら大きな向上は望めません。
業務量は減らず、効率は大して変わらず、労働時間だけを規制したとすれば、さらにサービス残業のような無償労働が増えるだけで、それが今まで以上に水面下に隠れていくことしか考えられません。
業務量という話になった時、経営者から一般社員まで、立場を問わない多くの人が「簡単には減らせない」といいます。現場の一般社員に近づくほど、会社次第、上司次第の他力本願に傾かざるを得ず、肝心の会社や上司は、「残業するな」とは言いますが「仕事を減らせ」とは言いません。
ここで、本当に仕事は減らせないのかというと、私はそんなことはないと思います。これは私自身が自分の会社員時代に、それほどの長時間労働をすることがなく過ごすことができていたからです。
火を噴く業務にはまったこともなく、トラブルや緊急事態もごく限られた回数しか降りかかってきたことはありません。おかしな時間帯の打ち合わせや無駄に長時間の会議も、よほど何かが起こった時に限られますし、そんなことは年に何回もありません。
残業も遅くて20時過ぎがいいところ、ほぼ定時で帰ることができる日もたくさんありました。
だからと言って仕事が滞ることも、手抜きだと注意されることもなく、それなりの評価ももらっていました。
心がけていたのは簡単なことで、「無駄なことを極力しない」ということでした。
まずはよけいな事務作業を極力しないことと、それにかける時間を最小限にすることですが、幸いOA操作や事務作業の手は早かったので、それは良かったと思っています。
トラブルに巻き込まれないなどというのは、確かに運もありますが、そういうことが起こらないように、できるだけの事前準備をしていたということはあります。
定時外の打ち合わせなどは、上司にも顧客にも社内にも避けてほしいとはっきり言っていましたし、そのかわり何かあれば、そういうことは関係なしで対応していました。上司の指示や他部署からの依頼があっても、「これはここまでやらなければダメですか?」というような確認はよくしていました。
要はメリハリをつけるということで、なし崩しに相手の都合だけに合わせることはしませんでした。
ただし、そういうことを認めてくれる上司や周囲に恵まれたということはあると思います。
こんな私の経験も、職場環境によりけりで、簡単に真似できるものではないかもしれません。ごく少数のレアケースなのかもしれません。
ただ、業務量を増やさず、効率を上げて、労働時間も抑えるということを実践できたという点では、何らかのヒントはあるように思います。
いずれにしても、量と効率と時間のすべてに注目しなければ、本当の業務改善はできません。「サービス残業撲滅」だけでは、結局サービス残業を増やしてしまうと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。