IPOの意向を持つ企業、「サービス業」が約半数を占める

2017年5月4日 07:03

 2016年11月の米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選すると、減税や財政出動、インフラ投資の拡大といった同氏の経済政策への期待からドル高が進んだ。相対的に円安となったことで国内株式市場も上向き、2017 年に入ってからも堅調に推移している。そのため2017年のIPOは、前年のLINE、九州旅客鉄道(JR 九州)のような大型上場の予定こそないものの、前年並みの件数が見込まれている。そのようななか、帝国データバンクでは、保有する企業情報のなかからIPOの意向を持つとみられる企業を抽出し、アンケート調査を実施した。

 IPOの意向を持つ企業属性を業種別に見ると、「サービス業」が48.5%(132 社)と約半数を占めた。そのうち最も多いのは「情報サービス業」で全体の 20.6%(56社)を占めた。業務用ソフトウェア、Webシステム、スマートフォンアプリなどの開発企業を中心に、IT系企業のIPO意向が引き続き高かった。

 本社所在地域別では、「関東」が51.5%(140社)と最も多かった。そのうち「東京都」が全体の40.1%(109社)を占めた。次いで「近畿」が18.4%(50 社)、「九州・沖縄」が7.4%(20社)となっている。前年調査と比べ、「関東」の割合が5.3 ポイント減少、「東京」の割合も6.4ポイント減少した。代わって「甲信越・北陸」が2.5ポイント増、「近畿」が2.9%ポイント増となり、東京への一極集中がやや和らいだ。

 IPOの意向が「ある」と回答した企業272社に対しその目的について尋ねたところ、「知名度や信用度の向上」と回答した企業が72.1%(196社)と最も多かった。次いで「優秀な人材の確保」(68.8%、187社)、「資金調達力の向上」(52.9%、144社)という回答が続いた。IPOは、本来は株式市場において投資家から資金調達を行うための手段である。しかし実際には、上場企業としてのネームバリューや信用力の向上、それらによる人材獲得面でのメリットを期待する企業が多い。人材確保ニーズの高さについては、雇用関連統計がバブル期並みの水準となり、各業界で人手不足が問題化し、人材獲得競争が激化していることも要因のひとつと考えられる。

 「社内管理体制の強化」の割合は、13.2%から14.7%へと 1.5ポイント増加した。この一年で大手企業における不正会計や違法残業などが相次いで報じられ、コンプライアンスの重要性があらためて認識された結果とみられる。それ以外では、「従業員の士気向上」の割合が 34.8%から29.0%へと5.8ポイント減少し、代わって「売り上げの拡大」の割合が16.8%から18.8%へと2.0ポイント増加した。国際情勢や景気の見通しに不透明感が漂うなか、IPOの結果として、より目に見える成果が求められるようになったものと考えられる。

 IPOの意向が「ある」と回答した企業272社に、その予定市場を尋ねた。「東証マザーズ」への IPO予定が 59.2%(161社)で最も多かった。次いで「東証 JASDAQスタンダード」が 18.0%(49社)、「東証2部」が8.5%(23社)、「東証1部」が5.1%(14社)を占めた。

 東証マザーズは、今後東証2部、東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場というスタンスが定着し、ベンチャー企業が第一にIPO を考える市場となっている。調査においてもマザーズへの IPOを予定する企業の割合は年々増加しており、今後もこの傾向が続くとみられる。 (編集担当:慶尾六郎)

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