空き家がセーフティーネットに 低所得者向け賃貸住宅として活用
2017年5月3日 07:36
19日、参院本会議で改正住宅セーフティーネット法が可決し、成立した。今回、高齢者や所得が低い子育て世帯を対象とした賃貸住宅として、空き家や空き室を登録し、情報提供を行う制度の創設が盛り込まれている。
この制度は、空き家の所有者が賃貸住宅として都道府県などに登録。高齢者や低所得者層などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まないことを条件として、家主への家賃・改修負担を補助するというものだ。耐震改修やバリアフリー化を想定し、住宅金融支援機構から融資が受けられる。同省は今年秋から運用を開始し、2020年度までに17万5千戸の登録を目指している。
住宅確保要配慮者は民間の賃貸住宅への入居を断られるケースが多い。家主が家賃の支払いに対する不安を感じるのが要因だ。従来、住宅確保要配慮者向けのセーフティーネットとして、公営住宅が供給されてきたが、応募倍率は全国平均で5.8倍、東京都に至っては22.8倍で、公営住宅への入居もハードルが高く、セーフティーネットとして機能しているとは言い難い面もある。しかし、多くの自治体は財政上の問題から、新たな公営住宅の建設が難しい現状だ。一方、空き家は増加しており、その数は800万戸以上に上っていると言われている。空き家が増加することによって治安悪化などの問題も懸念されている。
増える空き家の有効活用と、公営住宅が少ない中で貧困・高齢化によって住まいが確保することが難しい人に新たなセーフティーネットを提供するという、大きく分けて2つのメリットが得られる施策として期待されている。自治体から家賃が補助されるので、これまで懸念されてきた家賃の不払の心配も軽減される。
ただ、古くて大規模な改修が必要な空き家も多く、補助だけではリフォームしきれない物件もあるだろう。また、家賃が補助されるとはいえ、どれほどの家主が住宅確保要配慮者を受け入れるかは不透明だ。制度の運用を開始して、登録件数を見つつ、家主に対して登録を説得するなどの対応が必要になるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)