ガン細胞の死を誘導する人工核酸を創製、東京工科大

2017年4月30日 12:55

 東京工科大学は、ガン細胞に選択的に働きかけ、アポトーシス(自律的な死)へと導く人工の核酸を創製することに成功したと発表した。

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 説明していこう。細胞の死には2種類ある。アポトーシスとネクローシスである。翻訳の難しい概念であるため、日本語でもこのまま用いられることが多い。アポトーシスは、システム的に設計された死、自律する死である。細胞というものの多くは、役割を終えた場合に自己崩壊を起こしたり、そういった設計を与えられている場合が多い。これをアポトーシスという。

 一方のネクローシスは、破壊的な死、または他律的な死である。喩えるならば、人間を銃で撃つと血が飛び散って周囲を汚す、という現象に似ている。ネクローシスによる細胞の死は、周囲にもダメージが及んだりする場合が多い。

 ちなみに、ガン細胞は基本的には不死の細胞である。いや、外的に破壊して殺すことはできる(つまり、ネクローシスだ)のだが、アポトーシスを起こす機能が失われているのだ。

 この、通常ではアポトーシスを起こさないガン細胞に何とかしてアポトーシスを起こさせ、自律的な死に導けないか、というロジック、つまりは、概念的なガン治療法は、以前から提唱されてはいた。今回の研究は、その実現への道を拓くものである。

 研究チームによると、約15万種類の人工の核酸の中にたった一つだけ、ミトコンドリア膜の電位に作用し、それを経由してガン細胞の増殖性を著しく抑制するものが見つかったのだという。名を「TMEM117」という、膜タンパク質の一種であった。今後、その機能を解明していくことで、ガン治療への応用が期待できるのではないかと考えられる。

 なお、この研究の成果は、科学誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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