乃木坂『史上最弱アンダー』が魅せた最高のライブ
2017年4月21日 16:46
4月20日より東京体育館において開催された『乃木坂アンダーライブ全国ツアー 東京』が話題だ。
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乃木坂のアンダーライブというのは、表題曲のメンバーに選ばれなかった「アンダー」と呼ばれるメンバーだけによるライブで、今から3年前よりはじめられた。当初は全国握手会の会場の片隅ではじめられたものが母体となっている。
当時、今よりも知名度のなかった乃木坂46は、選抜ですら外の仕事が充分にあるとは言えず、ましてやアンダーメンバーは、冠番組にもなかなか出演できず、自分たちをアピールできる場所がほとんどといっていいほど存在しない、そんな苦しい状況だった。
そんなメンバーの熱意により、試験的に行われた最初のアンダーライブは、無料ではあるが、一定の条件を満たしていなければ入れないというもので、実際に会場はスカスカ。半分も埋まらない状況でのスタートであったが、その後内容が口コミで伝わり、有料での定期開催となり、一昨年の年末にはとうとう、初期の目標(というよりありえない願望?)であった日本武道館2daysでのライブを成功させ、昨年からはアンダーライブ全国ツアーと銘打って、東北・中国での公演を行っている。
しかしながら、今回のアンダーライブは、当初より成功を疑問視されていた。
選抜の人気メンバーの卒業に加え、17th『インフルエンサー』の選抜人数が増加したことで、これまでアンダーライブのセンターをつとめてきたメンバーが全員選抜に入り、最少人数の12名、それも握手会などのデータを見る限り、人気的には選抜に劣るのは否めない。
そこに加え、平日(木・金・土)の開催、しかも告知期間が短く、地方から遠征してくる人にとっては苦しい日程。さらに、これまでに比べチケットの定価は7800円と高め。しかも、武道館とほぼ同じキャパの東京体育館で4公演、おまけに直前にスキャンダルの餌食になって炎上し、中傷を受け続けているメンバーもいれば、直前まで舞台の仕事があって、ライブの練習やリハに充分な時間が取れないメンバーもいる。その上、直後に今が旬の3期生だけの単独ライブをぶつけるという鬼畜ぶり。一部のアンチからは「不人気メンバー卒業への肩たたきライブ」とまで揶揄される始末だった。
初期から、アンダーライブは「次回公演」が約束されていない。不人気であれば、いつ打ち切られるかわからない、ある意味毎日がサバイバルのようなライブであり、それがまだアンダーライブ特有の一体感を産んできた側面もあるのだが、そうだとしても、今回ばかりは苦戦は免れないという見方が大半だった。
こういうときには、どうしたって守りに入るというか、過去の実績のある人気企画を挟みながら、傷を最小限に留めて、なんとか次回開催ができる程度にはまとまったライブをしたくなるものだ。幸い、アンダーライブ名物「全員センター」とか「ノンストップライブ」といったコンテンツもあるわけだから。
しかしながら、その予想はいい意味で裏切られた。最弱・最少メンバーのライブは、ある意味リスキーな新企画で、過去のライブに対して『勝ち』に来たのである。
今回の企画は『ファンタスティック3』と銘打ち、その日選ばれた3人のメンバーが、センターで3~4曲を任されるというもの。一見、全員センター企画の改良版に思われるかもしれないが、1日に3人だけが選ばれることから、そのメンバーのファンではない客にとっては満足度が下がってしまう可能性もある。
だが結果は、予想以上に観客の心を揺さぶった。
20日に選ばれたのは、ダンスに不安のある山崎玲奈、歌に不安のある鈴木絢音、歌もダンスも安定感のある斎藤ちはるの3名。しかし、山崎が鬼気迫る表情でキレッキレのダンスを披露したかと思えば、アイドルらしいかわいく、伸びのある声で熱唱する鈴木絢音が空気を支配し、斉藤がしっかりと『君の名は希望』を歌って観客をしびれさせてくる。
推しが誰であろうと関係なく、観客はサイリウムをふり、声を出し、中には感動のあまり涙を流すものすら一人や二人ではなかった。もちろん、選ばれた3人の周囲では、他のメンバーがダンス・歌をサポートして、完成度を高めていたのは言うまでもない。
果たして、昨夜のSNSでは、アンダーライブのレポートが多数あがり、その内容を見た人が、「いけばよかった」「明日も当日券はあるのか?」と、ツイートしている。実際、昨日のライブでも、3F席の一部にシートがかけられていたとは言え、当日券を求めて並んでいる人が多く、ほぼ満席状態だった。
逆境になればなるほど盛り上がるという判官びいき的な部分もあるとは思うが、最弱と呼ばれるアンダーのメンバーは、単独CMが決まった伊藤かりん、舞台での高評価も記憶に新しい能條愛未、伊藤純奈、アンダーながらテレビレギュラーを獲得した鈴木絢音、佐々木琴子、乃木坂最強の歌姫兼舞姫、川村真洋、進境著しいアンダーセンター渡辺みり愛など、錚々たるメンバーがそろっているのだ。
改めて、乃木坂の層の厚さを実感させるライブであった。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る)