東北大、トランス脂肪酸が動脈硬化などもたらすメカニズムの一端を解明

2017年4月21日 12:00

 トランス脂肪酸の害なるものは指摘されて久しい。だが、その有害性は主に疫学的な調査データによって知られるのみで、どのような機序によって疾病を引き起こすのかは詳らかでなかった。今回、東北大学の研究グループは、トランス脂肪酸が細胞のアポトーシス(自律的死)をもたらすことを明らかにした。過度のアポトーシスの昂進は動脈硬化などを引き起こすことが知られており、これはトランス脂肪酸の有害性について新たな光を当てる発見であると考えられる。

 まず、トランス脂肪酸とは何か、ということから説明していこう。最も簡潔な説明をすると、油脂の一種である。油脂には、いくつかの種類があるが、その中で不飽和脂肪酸というのがあり、それがシス型の脂肪酸とトランス脂肪酸に分けられる。天然の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型であるが、トランス脂肪酸も、牛肉、乳製品などに少量ではあるが天然の状態で含まれている。

 とはいえ、人間の口に入るトランス脂肪酸のほとんどは、水素添加によって精製された、食品添加物などに含まれる油脂である。マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングに多く含まれ、従って、これらのものを多く用いるパン、ケーキ、ドーナツなどに多量に含まれている。

 トランス脂肪酸の摂りすぎは心臓疾患などを引き起こす、という疫学的事実は、アメリカ社会においては特に注目されており、社会問題ともなっている。だがそれについてはこれ以上の詳述は控えよう。では、今回の研究について見ていく。

 今回の発見によると、トランス脂肪酸は、自己由来の起炎性因子である細胞外ATPによって誘導される細胞死(アポトーシス)を促進するという。細胞外ATPは炎症や細胞死を惹起し、動脈硬化症を発症、進展させるのである。

 研究の成果は、Journal of Biological Chemistry電子版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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