老舗企業もECサイト活用 日本の商品をグローバル販売
2017年4月16日 08:29
ECサイトを運営している個人事業主が知り合いにいる、という人も近年は多くなってきた。インターネット上で商品を掲載し、受注も支払いもオンラインで済んでしまう。個人でも行えるECサイトだが、小売店舗を経営する企業でも、様々な形での導入が進んでいる。電子商取引プラットフォームを構築・活用し、コスト削減につなげ収益を確保する、そういった2つの企業の異なる戦略を挙げてみよう。
オンワードホールディングスは2018年2月期、不採算店舗を閉鎖したことにより利益率が上向いた。同期の連結純利益は前期と比べて12%増の53億円となる見通し。しかし、利益率は上向いたものの主力ブランドを扱う56店舗の営業を止めたため、売上高は同2%減の2393億円となる見込みだ。
一方で、オンワードホールディングスの事業会社であるオンワード樫山はEC(Electronic Commerce:電子商取引)経由に力を入れている。営業を停止した56店舗はオンワード樫山が運営する店舗だが、ECへの販売転換を行うことで、在庫を少なくし、売れ残った商品をセールで値引きする必要も無くなった。結果、営業利益は同36%増の57億円となる見込みだ。
オンワードホールディングスはECサイトの活用によりコストを削減し、実店舗の閉鎖による固定資産売却益も手伝って業績を改善させた。次に挙げる例は、ECサイトを販売実績の拡大に使おうとしているものだ。
兼松は、ECサイト『SAKE NETWORK』を構築し清酒の輸出事業を開始した。国内の清酒市場は20年連続でマイナス成長となっているが、輸出は順調に拡大している。海外での和食ブームが追い風になっているのも事実で、今後も輸出額は伸びて行くと見込まれている。
『SAKE NETWORK』はB to B(Business to Business)越境ECサイトだ。海外バイヤーとオンライン上で取引をするのだ。これにより、中間マージンが削減され、日本の清酒が海外に安く流通する。
兼松は国内の酒蔵の清酒を、貿易商として創業した自社の物流通路に乗せて配送しようと、「MONSTER DIVE(モンスターダイブ)」と共同でプラットフォームを立ち上げた。
アルコール類の輸出入にはルールが存在する。国によってもルールは異なり、関税や輸出入業許可の取得義務付けなど、クリアすべき課題がある。これらのハードルは国内の酒蔵にとって難関であるが、兼松が引き受け、正しい日本酒の知識と共に海外へ販売するというものだ。
小売店舗を経営している企業にとってはECは脅威になることも多いが、うまく活用すれば経費の削減や販路の拡大につながる。新興企業だけでなく、老舗企業でもまだまだ活用の幅は広そうだ。