コミュニケーションロボット市場、16年度は前年比65.2%増の見込み
2017年4月3日 11:47
コミュニケーションロボットとは、人の言語や顔、存在等の認識機能や人からのボディタッチ(接触)の検知機能を有し、得られた外部情報に応じて自律的に反応する機能を持ち、実用に供せられるものを指す。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による実証調査において候補製品として認証された製品に類する機能を持つもの、実用化を目的として特定の効果を狙うもしくは効果が立証されているものである。矢野経済研究所では、国内のコミュニケーションロボット市場の調査を実施した。
言葉や動き、表情の変化によって人とコミュニケーション(情報や意志、感情)のやりとりをすることができるコミュニケーションロボットは、以前にも製品化されてはいるが、学術用や趣味性の強いものが中心で、玩具等との境界があいまいな部分があり、実用目的のものは僅かであった。
2014 年の「Pepper」の登場によりコミュニケーションロボットへの関心が高まるとともに、2015 年頃より相次いで、得られた外部情報に応じて自立的に反応する機能を持ち、実用化を目的とした新製品の投入が進むことで市場は急拡大している。2015 年度の国内コミュニケーションロボット市場規模(メーカー出荷金額ベース)は前年度比279.9%の23億8,500万円と大きく伸長した。2016年度も継続して新製品投入が見られ、コミュニケーションロボット市場は本格的に立ち上がる様相を呈しており、2016 年度の同市場規模は39億4,100万円(同165.2%)の見込みである。
2016年度に入って国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Researchand Development:AMED)による介護施設を対象とした大規模実証調査が行われており、コミュニケーションロボットにとって有望な需要分野の一つとして注目されている。その内容は、入手可能な市販品等から 19種類のロボットを候補として決定し、全国の介護現場において実証的に定量的データの収集とその評価を行うもので、コミュニケーションロボット導入の効果と有用性を明らかにすることにある。
今後、大規模実証調査結果が明らかになることで、コミュニケーションロボットメーカーにとって介護用途での課題が明らかになり、より有効な機能を追求する検討材料となり、ユーザーにとっては製品に応じた有効な使い方が示されることで、コミュニケーションロボット導入の呼び水になると考えるとしている。
2017年度以降はAMEDによる実証調査結果も明らかになり、介護用途における有効な使い方や課題・問題点が示されることで、製品改良や新製品投入も期待でき、介護施設向けの需要は拡大する見込みであるという。また、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、交通機関や各種施設における観光案内等で会話・動作複合型コミュニケーションロボット導入の機運が高まり、新たな需要も期待できる。
2020年度までは国内のコミュニケーションロボット市場は拡大傾向が続く見通しで、その後の普及期に向けた大きな足掛かりとなり、2020年度の国内コミュニケーションロボット市場規模(メーカー出荷金額ベース)は87億4,000万円になると予測している。(編集担当:慶尾六郎)