絶望エンド予想の『鉄血のオルフェンズ』、それでも惹きつける理由
2017年4月1日 21:33
■いよいよ最終回を迎える『鉄血のオルフェンズ』
2016年10月から放送がスタートした『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』の第2シーズン。いよいよ4月2日に最終回を迎えるが、2期では主人公サイドの重要キャラクターがどんどん死んでいくなど、毎回鬱な展開となって話題を呼んでいる。歴史あるガンダムシリーズだが、どのようなラストを迎えるのだろうか。
■泥臭く、生き抜くことに必死な少年たちの物語
『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』は、第1期が2015年10月からスタートし、現在は、2017年4月まで2期が放送される予定である。従来のガンダムではお馴染みのビーム兵器は出てくることが無く、モビルスーツ同士が大きな鈍器で殴り合い、実弾の銃兵器を撃ち合うという少し変わった趣向となっている。
また、ガンダムシリーズではその時代の子供にフィーチャーする傾向にある。今回の『鉄血のオルフェンズ』においてもその傾向が見られ、「オルフェンズ」というタイトルにもあるように孤児がたくさん出てくる。主人公の三日月・オーガスも親がおらず、彼と共に戦争に参加するオルガ・イツカにも親がいない。さらに、ヒューマンデブリという人身売買される孤児たちも存在しており、三日月たちと行動を共にする。
本作ではこうした孤児たちが、戦争に理由を付けて参加するのではなく、自分たちがとにかく生きるために銃を取り、モビルスーツに乗り込んで闘うことになる。これは現代でも、とにかく働かないと生きていけない子供たちや若者を投影しているようで、同年代の人たちにはセンセーショナルな物語として映る。
さらに、対比として理想や夢を語る人間も多く出演するが、彼らはその理想を利用して私利私欲を肥やすキャラクターが多くなっている。三日月たちからすれば自分の生活を脅かす人間でしかなく、彼は理想を掲げる人間をどんどん蹂躙していく。その姿からは、自然と解放感を感じてしまう。
■マクギリスも「孤児だった」という事実
第1期では三日月たちがどんどん権威ある組織を倒し、周りからも注目を集める傭兵団企業として急成長する。しかし、力だけの急成長はドーピングのようなもので、その反動によって彼らは窮地に立たされることになる。力だけでのし上がった彼らを恨む存在が出現し、さまざまな障害となって立ちはだかる。
さらに、第1期でも三日月たちと同盟を組んだ人間にマクギリス・ファリドという人物がいる。彼は自らが所属する軍隊組織を改革したいがため、三日月たちと手を組むことになる。しかし、彼も三日月たちと同じく孤児であることが2期に判明し、力で世の中を変えようとしてしまったのだ。
理想なき力による変革では人が付いてくることが無く、第2期ではどんどんと窮地に陥っていってしまう。理想だけでは何も変わらないが、力だけでは何も変わらないことを語っている。マクギリスはもっと理性的な人間のようであったが、その本質が「力」に固執したために転落する姿は、もの悲しい展開となっている。
マクギリスが力に固執してしまったのは、彼が孤児であり、本質的に三日月と変わらなかったということが後半で語られる。身分こそ軍隊組織の将校であったが、元々は孤児であるため特権階級などをひがんでいたのだ。その階級を否定しないと前に進めなかったマクギリスも、ある種『鉄血のオルフェンズ』の主役であったと思う。
■報われないエンドを迎えたガンダムシリーズの仲間入りとなるのか
現在、『鉄血のオルフェンズ』の主役たちは窮地を迎えている。ネット上では希望の無いエンドに期待と不安を抱いている。しかし、過去には『Ζガンダム』の主役であるカミーユも、ラストには精神崩壊というエンドを迎えた。
『鉄血のオルフェンズ』でもカミーユと同じように悲劇的なラストとなりそうだ。だが、現代を生きる若者としては、特権階級の人間たちに一矢は報いて終わってほしいと願うばかりである。『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』の最終回は、4月2日の17時から放送される。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)