酒に弱いと骨粗鬆症から大腿骨骨折に至るリスクが高まる
2017年4月1日 18:58
慶應義塾大学医学部の研究によると、酒を飲んだときに赤くなりやすい体質(遺伝的性質)の持ち主は、そうでない人間に比べて、骨粗鬆症による大腿骨骨折を起こしやすいことが明らかになったという。その差、2.48倍。
アルコールに弱い体質、というのは、基本的には遺伝で、つまり生まれながらに決定される。アルコールは体内に摂取されるとアセトアルデヒドに変換されるが、このアセトアルデヒドの分解に必要なALDH2という酵素タンパク質が遺伝的に弱いか、活性を欠いていると、酒を飲んだ時に顔が赤くなりやすい体質になる。日本人をはじめ、東アジアの人種にはこの体質の持ち主が多いことが知られている。
骨粗鬆症とは、カルシウムの不足などの原因によって、骨がもろくなる疾患である。女性、特に高齢の女性に多く見られることでも知られる。骨粗鬆症がもたらすデメリットは様々あるが、中でも特に深刻な問題とされているのが、大腿骨の骨折だ。単に治るのに時間がかかるという問題のみならず、寝たきり生活になってしまうリスクなど、QOL(クオリティオブライフ)に対して与える影響が極めて大きい。
さて、骨粗鬆症の原因はカルシウムの不足だけではない、というのが今回の研究である。アセトアルデヒドも、その元凶の一つとなるらしい。アセトアルデヒドは、骨芽細胞の機能を阻害する作用を持っていることが、今回の研究の中で実験的に示されている。
なお、これは「飲酒をするかどうか」とは必ずしも関係はない。アセトアルデヒドはアルコールの代謝物としてよく知られているが、自動車の排ガスなどによって大気中にも含まれており、完全に回避することは不可能であるからだ。
通常の体質の人間ならアセトアルデヒドは代謝されてしまうが、アセトアルデヒドを分解できない体質の持ち主は、その蓄積によって体内で骨芽細胞の発生が阻害され、骨粗鬆症を引き起こすというのが今回の研究の主眼である。
ただし、「酒に弱い体質かどうか」というのは比較的容易に知ることができる上、ビタミンEの摂取によってこの骨粗鬆症のリスクは低減することができることも明らかになっている。
なお、研究の詳細は、学際的総合ジャーナルScientific Reports誌に掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)