日立ら開発のAI、ウェアラブル端末から作業内容をリアルタイムに認識
2017年3月22日 08:43
日立はドイツ人工知能研究センター(DFKI)と、ウェアラブルデバイス着用者の作業内容をリアルタイムで認識する人工知能(AI)を開発した。同技術では、メガネ型ウェアラブルデバイスにアイトラッキング機能を実装することで、作業者の眼球の動きから注視点データを抽出。Deep Learningにより習得した画像認識手法を用いて、背景の写り込みなどの周辺環境に影響されずに、作業対象の「ネジ」や「ドライバー」といった物体を認識する。併せて作業者の腕の動きを筋電位などの信号からセンシング。抽出された動作関連情報のDeep Learningにより、「回す」「押す」などの腕の動きを伴う身体動作の認識手法を習得する。生産現場で想定する物体と身体動作をそれぞれ個別に事前学習することで、多様な作業が認識可能となり、作業における各工程をリアルタイムに認識する。
今回開発したAIを応用し、逸脱行動を検知した際に、作業者自身や監督者にフィードバックしたり、正しい作業手順に沿ってAIが誘導したりといったことが可能となる。従来の作業内容の認識技術は主にカメラ映像によるものが多かった。たとえば、自動車のエアバッグを膨らませる装置を扱うダイセル播磨工場では、日本マイクロソフトの「Kinect」含む34台のカメラを使って作業員の姿勢を分析、業務改善に活かしている。カメラにより作業員の関節位置や動きを捉えてデータ化、標準動作モデルから逸脱した動作を検知すると、ライン監督者の装着しているスマートウォッチにアラートが飛ぶ仕組み。
カメラによる映像認識に加え、今回日立らが開発したアイトラッキングと物体の画像認識、作業者の筋電位のセンシングによる動作認識の技術が登場したことで、より緻密にヒューマンエラーの検知や行動支援が可能になると考えられる。また、アイトラッキング活用による焦点が当たっている部分に限定した画像処理は、作業の検知精度を高めるだけでなくコンピュータリソースの消費を抑えることからリアルタイム性においても有利となる。「働き方改革」が進められるなか、同改革の柱となる同一労働同一賃金実現のためには、個人の生産性を正確に測定する必要性が浮上している。生産現場のみならず多様な職場において、それぞれの環境に適した労働監視システムの採用が求められており、同技術の開発意義は大きい。(編集担当:久保田雄城)