グーグルのディープマインドが保健医療分野へ、医療記録にブロックチェーン活用

2017年3月21日 08:48

 アルファベット(グーグル)傘下の人工知能研究部門ディープマインドが保健医療分野での事業を広げている。患者の病気の初期徴候を医療スタッフに通知するソフトや眼病を診断するAI、がん治療を指導する機械学習手法などを次々リリースする同社が、このほどブロックチェーンを活用した医療記録監視システムの開発を進めていることを発表した。同システムは、まずはロンドンのザ・ロイヤル・フリー・ハムステッド病院をはじめ、協力関係にある複数の病院に試験導入されるとのこと。

 同システムでは、ブロックチェーンの一度記録されたものは暗号化され改変が不可能になる性質を利用して、医療記録の内容や使用された目的、使用者などを正確に把握できるようにする。これにより、治療履歴の追跡が容易になり、不正の隠蔽ができなくなる。病院職員は医療記録がどう利用されているかをリアルタイムで把握できるほか、異常なデータの利用があったことを検知した際のアラートも設定できる。将来的には同システムを患者に開放する可能性もあるとのこと。

 ブロックチェーンはビットコインで活用される技術だが、他分野での応用が広がっている。世界最大の海運企業マースクは、貨物の追跡にブロックチェーンを活用すべく検証を行っている。これにより、書類作成に関わる30人の200回にもわたるやり取りを簡素化する。世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートでは安全衛生基準の向上を目的とした農産物の産地情報の表示と記録のためにブロックチェーンを活用している。

 医療記録監視システムの構築には課題もあり、そのひとつは医療記録があちこちに分散していることだ。このため、システムの複雑化は避けられず、さまざまなデーベースシステムを介したデータを扱いつつ正確にシステムを稼働させるための拡張性が必要となる。試験導入では、複雑な環境下でも確実に動作するシステムの構築に向けた、ディープマインドによる取り組みが進められると考えられる。(編集担当:久保田雄城)

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