対北朝鮮政策 浮き彫りになる米中の意識差
2017年3月20日 21:47
トランプ政権の閣僚としては初めて中国を訪問しているアメリカのティラーソン国務長官は、18日、中国の王毅(ワンイー)外相との間で、米中外相会談を行った。主な議題として北朝鮮問題が議論の俎上にのぼったが、結果としては両国の北朝鮮に対する認識・意識の隔たりが浮き彫りにされることとなった。
簡単にいえば、中国は「アメリカと北朝鮮は対話を行うべきである。中国にはその仲介をする意思がある」という態度、これに対しアメリカは「中国は北朝鮮に対する包囲網に参加するべきである」という姿勢である。これでは妥協点を見つけるのは難しいであろう。
北朝鮮に対する先制武力攻撃さえ視野に入れているトランプ大統領は、自身のツイッターで、「北朝鮮はこれまでずっとアメリカを手玉に取り続けてきた。中国はといえば、(この問題に対し)何の貢献もしていない」と発言、中国の姿勢に対する不満をぶちまけている。
ここで、歴史的経緯のおさらいをしておこう。朝鮮戦争についてである。
朝鮮戦争は1950年に勃発し、1953年から現在に至るまで停戦状態にある(公的には、終結はしていないとされている)。北朝鮮が、当時既に事実上の国境線であった38度線を越え、朝鮮半島の統一を目指し、韓国に侵攻したことで始まった戦争である。
詳細を述べるとゆうに一冊の本になってしまう故、簡潔に要点を述べる。北朝鮮は一時、逆に北進した韓国軍と、同盟軍として参加した米軍によって、滅亡寸前まで追い詰められた。その時に、「義勇兵」と称する事実上の援軍を送り、北朝鮮を窮地から救い、現在にまで至る朝鮮半島の膠着状態を作り出した張本人が、誰あろう、中国である。
政治的建前の上ではともかく、事実上、中国とアメリカは北朝鮮を巡って、かつて一度矛を交えているのだ。
中国は現在、地下パイプラインを通じ北朝鮮に年間50万トンの原油を供給しており、経済的窮状にある北朝鮮にとってこれはまさに生命線である。アメリカはこのパイプラインの停止を求めているが、北朝鮮を暴発に追い込みたくない中国は極めて消極的な態度を取っている。
中国が、朝鮮戦争から半世紀を越える時とそれに伴う国際情勢の根本的な変質を経てなお「北朝鮮を見捨てることができない事情」は、一つや二つではないだろうし、そう簡単に論じ切れるものでもないだろう。
ただ、朝鮮戦争の当時とは、中国という国が世界において占める政治的・軍事的重みはまったく異なっているというのは誰の目にも明らかな事実だ。
北朝鮮に種々の問題行動を起こされるのももちろん困るが、さりとて北朝鮮を巡って、米中関係の冷え込みが深刻化してもそれはそれで非常に重大な問題となってしまう。何にせよ、日本としてはとりあえずは推移を見守るしかないといったところだろうか。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)