iPS細胞から血管を作る効率的技術、京大が開発
2017年3月19日 17:15
京都大学の研究グループは、ヒトの多能性幹細胞(iPS細胞)から極めて高い効率で血管内皮細胞を作成する技術を開発した。
よく知られているように、血管というものは人体のほとんどの部位に張り巡らされており、その機能は極めて重要である。血管は何層かの細胞から構成されるが、もっとも役割が大きく、その機能の中核を為す細胞は、血管の内部を一層に覆う血管内皮細胞だ。
iPS細胞を用いて臓器や組織を作る研究は各種進められているが、ほとんどの臓器・組織はその生着・維持において血管が同時に必要になるため、iPS細胞から安定的に血管を作り出す技術は喫緊の課題であった。
研究グループは、これまでマウスのiPS細胞を用いた研究で蓄積したノウハウやデータをもとに、それをヒトiPS細胞に応用、今回の画期的な新技術の確立に結びつけた。ちなみに、この技術における最終的な細胞分化効率は、純度99%にのぼるという。
なお、マウスの研究で得られた知見とはどのようなものであるかというと、血管内皮細胞への誘導にはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor:血管内皮細胞増殖因子)が重要で、さらにcAMP (cyclic Adenosine MonoPhosphate)という仲介物質がその効果を高めるとのことである。
ちなみに、血管と一口にいっても部位などによって色々な種類の血管があるのだが、作成される血管は幼若な性質を持ち、さらにここから様々な血管へと分化成長させることが可能であるという。実際、CiRA(サイラ、京都大学iPS細胞研究所)の研究グループは、この血管内皮細胞をもとに、血液脳関門(心臓と脳を繋ぐ特殊な血管)のモデル作成に成功している。
また、この研究を元に作られた血管組織は既に、タカラバイオ社から研究用として市販されている。今後の展望としては、再生医療、三次元組織構築などへの広い応用が期待できる。
研究の詳細は、アメリカのオンライン・ジャーナルPLOS ONEで公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)