東北大が太ると血糖値が高くなることにつながる分子メカニズムを解明
2017年3月17日 09:06
肥満になると血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、血糖値が上昇する。インスリン抵抗性は、肥満状態の脂肪組織に白血球の一種であるマクロファージが入り込み炎症を起こすことによって誘導されることが知られている。マクロファージは、炎症を強める性質を持つ「M1型」と炎症を抑える性質を持つ「M2型」とに大別される。痩せた(正常)状態での脂肪組織に存在するマクロファージはほとんどがM2型で、脂肪組織内の炎症も抑えられているのに対し、肥満になると脂肪組織でM1型が増加し、そのことが肥満の時の炎症、ひいては、インスリン抵抗性の原因となると考えられている。
今回、東北大学大学院の医学系研究科糖尿病代謝内科学分野 片桐秀樹教授、東北大学学際科学フロンティア研究所高俊弘助教、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野 博士大学院生(当時)鈴木亨氏らの研究グループは、肥満した脂肪細胞では、CHOPと呼ばれるタンパク質が増加することを見出した。CHOPとは、細胞内でのタンパク質合成などが過剰になった細胞ストレス(小胞体ストレス)時に劇的に増加するタンパク質で、肥満状態の脂肪細胞でも増加している。このCHOPを欠損したマウスでは、肥満すると脂肪組織のマクロファージは増えるが、それは M2 型が多いままで、その結果、インスリン抵抗性や糖尿病になりにくいことを明らかにした。
また、痩せた状態の脂肪細胞はマクロファージをM2型に誘導する物質(Th2 サイトカイン)を分泌しているが、肥満した脂肪細胞ではTh2サイトカインの産生・分泌が減少すること、さらに、CHOPを欠損した脂肪細胞ではこの産生減少が起こりにくいことを発見した。さらに、培養脂肪細胞に小胞体ストレスをかけると、CHOPが増加することでTh2サイトカインの産生が激減することを証明した。このことから、肥満⇒脂肪細胞の小胞体ストレス⇒CHOPの増加⇒Th2サイトカインの減少⇒脂肪組織M1マクロファージの増加⇒慢性の脂肪組織炎症⇒インスリン抵抗性⇒糖尿病とつながる機序が明らかとなり、これに関与する脂肪組織内での分子メカニズムが解明された。
研究で解明された分子機序は、糖尿病・メタボリックシンドロームおよび動脈硬化に対する統合的な治療標的になるものとして期待されるという。(編集担当:慶尾六郎)