白石麻衣写真集『パスポート』はなぜ大ヒットしたのか?

2017年3月10日 21:22

 乃木坂46白石麻衣の写真集『パスポート』が実売で15万部を超えた。
 この数字は、出版不況と言われるこの時代としては異例の数字であり、現役アイドルではもちろんだが、これまでの写真集の中でも、ヌードのない20歳以上の女性アイドルの写真集としては最高記録に近い数字となる。
 さらに、同時期に乃木坂は、卒業して引退した橋本奈々未さん、齋藤飛鳥、秋元真夏、桜井玲香と、5冊の写真集の発売ラッシュがあり、どの本も5万冊以上の売り上げを見込んでいる。
 まさに「乃木坂現象」とでもいうべき状況が巻き起こっているのである。

 もちろん、写真集の出来がよく、モデルが人気アイドルである以上、一定数の売り上げは最初から見込めただろうが、さらに数字を底上げしたのには、写真集を出す各社がTwitterにおいて公式アカウントを開設し、自社の宣伝ばかりではなく、乃木坂の他のメンバーへのエールを送り合い、「ブーム」として現象化した影響も大きい。

 乃木坂が同じ秋元康プロデュースでありながら、AKBGと一線を画す部分というのは、メンバーもファンもが、winwinの関係を模索する土壌があるところだろう。
 AKBは、前田敦子vs大島優子から始まって、松井珠理奈vs松井玲奈、山本彩vs渡辺美優紀など、初期から運営が意図したのか、あるいはファンがそういう気質が強いのか、ライバル関係を作ってしまい、自分の推しを応援するのみならず、ライバル関係にあるメンバーを叩くという残念な空気がある。
 メンバー同士が仲がよかろうとお構いなしに、いや、むしろ一緒に遊びに行ったような話をブログに掲載しても、「写真の顔が嫌そうだった」などと決めつけて、ファン自身が煽るような部分もある。
 最近になって、そういう空気もなんとか緩和されてきているが、いまだに指原莉乃と渡辺麻友の関係を勘繰る声は大きい。

 そういう意味で、初期から「AKBの公式ライバル」として結成され、絶対王者に挑むルーキーのような立場であった乃木坂では、チーム内のライバル関係など、存在しえなかったのである(正確にはなかったとは言い切れないが顕在化はしなかった)。
 そのため、写真集の公式アカウントから先行で掲載される未公開ショットを、写真集を撮っていないメンバーも閲覧して、感想をブログやSNSにあげたり、ラジオやネット番組で紹介しても、ファンはむしろ喜んでいるという土壌が形成されている。

 いや、こういう空気はグループのスタート時には、どこのアイドルもあったのだ。
 だが、乃木坂がこの空気感を6年間も維持し続けられたというのは、一種の奇跡と言ってもいいのではないかと思う。
 スタート時、センターに固定されていた生駒里奈が、ごり押しと叩かれたときに、彼女をかばい続けたのは、白石や橋本だったし、2期生でいきなりセンターを任された堀未央奈に、誰よりも多く言葉をかけて、グループに馴染むようにしたのは生駒だった。
 また、遅れて参加してのいきなり選抜入りで、アンダーメンバーや一部の選抜メンバーとも関係に緊張があった秋元真夏を支えたのは、年少組でメンバーから可愛がられていた星野みなみだったりもする。

 つまり、対立することによる摩擦エネルギーで成功したAKBに対して、調和するための適材適所主義による協力エネルギーで成功を模索している乃木坂と、この二つのアイドルグループの本質は、実は真逆なのである。

 どちらが優れているかという問題ではなく、時代の流れが何を求めているかということを考えて、両グループを見比べてみるのは、大変面白いのではないだろうか?(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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