高断熱で高血圧予防?ヒートショック軽減するこれからの日本の暮らし

2017年2月26日 11:34

 数十年に一度という寒波に見舞われた2017年の日本列島。2月に入ってその勢いは増し、雪の多い日本海側だけでなく、普段雪に慣れていない太平洋側にまで雪雲が流れ込み、全国各地で大雪の被害が相次いだ。交通機関への影響などもさることながら、この時期に心配なのは、寒さによる健康被害だ。「寒くてなかなか布団から抜け出せない」なんて言っているうちはいいが、風邪やインフルエンザ、呼吸器疾患などで寝込んでしまっては目も当てられない。また、寒いとどうしても、体を動かすのが億劫になり、それがうつ病や睡眠障害などの引き金になることもある。

 そして最も怖いのが血圧への影響だ。冬は寒さの影響で、血圧が相対的に高くなる。血圧が高いと、心筋梗塞などの心疾患を引き起こす。また、たとえ屋内でも、暖房している部屋と暖房していない洗面所や浴室、トイレ、廊下などの寒暖差などによって引き起こされる血圧の急な変動も血管や心臓に大きな負担をかけてしまい、突然死にもつながりかねない。

 厚生労働省の研究班の調査では、年間平均1万7000人~9000人近くの人が入浴中に亡くなっているという。また、日本法医学会の調べによると、浴室での直接死因としては、溺死もしくは溺水が最多であるものの、死亡者数が11月あたりから増えはじめ、12月、1月にピークを迎えることから、温度変化による急激な血圧上下が失神などを招き、それが溺死に大きく関与しているのは間違いないだろう。また、厚生労働省による2015年の人口動態統計をみても、年間死亡数129万444人のうち約28%にあたる36万1138人が12月から2月の3ヶ月間に集中している。これは最も死亡数の低い6月から8月の夏季3か月間の29万5048人と比べると、6万6090人もの差である。

 慶応大学 伊香賀俊治教授らの論文「高断熱住宅への住み替え前後の家庭血圧比較‐冬季の室内温熱環境が血圧に及ぼす影響の実態調査(慶応大学 伊香賀俊治教授ら)」によると、平均室温が1℃上昇するごとに平均収縮期血圧が1.5㎜Hg低下し、室温が5度上昇すると起床時の血圧が2.3~7.5mmも低下するという調査結果が報告されている。また、同教授らの調べでは高断熱住宅に住むことが介護予防にも大きく影響し、健康寿命が推定で最大4歳ほど延伸する可能性も示唆されている。ちなみに高断熱住宅が普及している地域では、心筋梗塞などによる冬の死亡率が低くなることも分かっている。

 住宅メーカーなどでも、これらの調査結果を参考に住宅内における寒暖の差を少なくする高断熱仕様に力を入れている。例えば、積水ハウスでは小さな熱の出入りも見逃さないオリジナル断熱仕様「ぐるりん断熱」を採用し、高い断熱性と気密性で冷暖房効率を高めながら、住宅内の寒暖差を少なくする工夫を施している。全地域標準仕様で「省エネ法H25年基準」をクリアしており、断熱等性能等級の最高等級の「等級4」にも対応新築の戸建て住宅で一般の複層ガラスのおよそ2倍の性能を持つアルゴンガス封入複層ガラスを採用している。

 浴室暖房や洗面所やトイレの暖房に気を配る人も増えている。リフォームや住み替えなど大掛かりな工事をしなくても、パナソニック のトイレ用暖房機「ポッカレット」やTOTOの洗面所暖房機、人感センサー付きの小型ファンヒーターなど、手軽に備えてヒートショックを予防できる電化製品も増えている。値段も数千円から数万円程度とリーズナブル。そんな値段で、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが軽減できるならば、安くて有効な予防になるのではないだろうか。

 超高齢社会に突入している日本にとって、寒さによる健康被害は決して他人事ではない。健康で長生きするためにも、住宅内の温度差には注意を払いものだ。(編集担当:藤原伊織)

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