「高齢者サポート事業」へのトラブル急増 消費者委員会が注意喚起
2017年2月25日 11:40
消費者委員会は、身元保証などを行なう「高齢者サポート事業」について、様々な問題が発生しているとの調査報告を行なった。料金を支払った後に業者が倒産して契約が履行されない、などの苦情が寄せられている。
世界に類をみない高齢化が進む日本。内閣府の「高齢社会白書」によると、2015年の高齢者人口は約3,392万人となり、全人口に占める割合は26.7%に達した。さらに独居の高齢者は約624万人と、全高齢者のうち約18%を占めている。
加えて親族の減少や、近所関係の希薄化により、普段の生活や財産の管理などに支障が生じる高齢者が急増している。身元保証、死後の事務などについての懸念も顕在化するにつれ、それらをサポートするとうたった「高齢者サポート事業」が多数登場するに至った。
これらのサポート事業は、入院や入居時の身元保証、買い物や各種手続きの代行などの日常生活の支援、死後の事務、などが主なサービスとなっている。利用するためには入会金や月額利用料などに加え、一定額の預託金を納める必要がある。だが、この預託金を別の事業などに流用していたとして、業界大手の「日本ライフ協会」が、2016年に公益財団法人の認定を取り消されるという事件が起きた。日本ライフ協会はその後経営破たんしたため、利用者はサービスを受けられない上に預託金も返還されないという、二重の被害が発生してしまった。
このトラブルを受けて、消費者委員会は消費者庁と厚生労働省に対し、適切な指導や規制を行なうように提言した。具体的には、契約内容の適正化、費用体系の明確化、預託金の保全措置、第三者が契約の履行を確認する仕組みの構築、などである。また、サービスに対する苦情や相談を集めて対応策を講じる仕組みも作るべきだ、と提案した。
高齢者が介護保険施設に入所または入院する際には、身元保証人を求められるケースが多い。しかし、法令上は身元保証人が必要という規定はなく、サービスの提供を拒否する正当な理由とはならない。この事実の周知も求められている。
いわゆる「高齢者サポート事業」については、指導監督する行政機関が明確でなく、規定する法令や、健全な運営を相互監視する業界団体も組織されていない。そのためどれだけの事業者が存在し、どのような事業を行なっているのか、実態が把握しづらい状況となっている。今後ますます高齢化が進む日本。高齢者の支援事業について、早急な整備が求められている。(編集担当:久保田雄城)