ハイレゾオーディオの進化・普及を支えるデバイスと半導体技術

2017年2月18日 21:02

 2014年3月、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が、デジタルオーディオに用いられる PCM 方式のデータにおける「ハイレゾリューション・オーディオ(High-Resolution Audio)」の定義を発表した。

 高品位オーディオ製品の謳い文句で、ここ数年喧伝される「ハイレゾ」だが、それまでキチンした定義があったわけではなく、各社が自社製品の仕様に応じてそれぞれに呼称していたに過ぎない。

 3年前にJEITAが定義した「ハイレゾ」は、44.1kHz や 48kHz、96kHz、192kHz などの音源が混在する現状で、JEITAとしての言葉の定義を定め市場の混乱を避けるのが目的で設けたものだ。

 その時の発表によれば、JEITAのいうハイレゾ音源とは「CD スペック」を上回るオーディオデータのことを指す。JEITA のいうCDスペックとは、CDが採用している 44.1kHz/16bitと、DVDやDATが採用するサンプリング周波数 48kHz/16bit の音源も含む。

 JEITAによる定義に加え、日本オーディオ協会が示す付帯項目である「録音、及び再生機器並びに伝送系」での性能と、生産および販売責任での聴感評価が確実に行なわれていることが必要だと追加されている。

 ハイレゾ音源は、空気感や透明感、ニュアンス、音の厚みなど説明しにくい部分の再現性が良く、CD では聴くことができなかった音が聴こえたり、新たな発見があったりという楽しみも味わえるという。

 こうしたハイレゾ音源の再生システムに注目が集まるなか、京都の半導体メーカー、ローム<6963>が「ハイレゾと高音質オーディオを支える半導体技術」をテーマにセミナーを開催し、その中でハイレゾ対応オーディオSoCの新製品を発表した。

 セミナーでは、世界的に普及するハイレゾの最新動向とその愉しみ方について、著名なオーディオ&ヴィジュアル評論家の山之内正氏が、ハイレゾ再生のデモと講演を行った。そのなかで解説されたハイレゾの進化と普及、芝らしさの説明は割愛するが、セミナー解説のなかで特徴的だったひと言を紹介する。

「高品位なハイレゾを含めた高品位な音楽再生技術“ネットワークオーディオ”は、音楽データを軽くして利便性を上げるトレンドと、アンチ圧縮派として音質にこだわる“本物のハイレゾリューション・オーディオ”のふたつの方向性がある」と力説した点だった。

 また、ロームがこのセミナーで繰り返し述べたのが「デバイスの音質設計」という言葉だ。音質設計とはロームのIC製造工程において、各工程で音質に影響を与える28のパラメーターを開発者の人間の聴覚で設定して狙った音質を達成するための独自の技術だという。

 セミナー会場で実施したハイレゾ再生デモでは、音質設計を施すまえのICと音質設計を実施したものとの比較が成された。音質設計後のICを使ったデモは、音の輪郭が明らかに明瞭で臨場感のあるクリアな音が楽しめた。

最後にロームがこの日に発表したハイレゾ対応オーディオSoC「BM94803AEKU」は、従来の伝統的なオーディオから最新のBluetoothスピーカー、USB-DACなどのデジタルオーディオ機器に搭載してあらゆる音源の再生を可能とするオーディオアプリケーションの頭脳ともいえる部分をひとつにまとめたもの。ユーザーの求めるあらゆる音源に対応でき、さらには傷ついてしまったCDも滑らかに再生することが可能だという。実際に当日の懇親会ではデモ機が準備され、参加者は新製品の忠実に再生される音源の質を楽しんでいた。今後も高品質オーディオを支える半導体技術の進化に期待したいところだ。(編集担当:吉田恒)

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