有害な化学物質が男性の不妊を引き起こす、東北大の研究

2017年2月15日 09:11

 東北大の研究チームは、ポリ塩化ビフェニルなどの環境由来の化学物質が、男性の精子数の低下を招き、不妊症の原因のひとつとなることを突き止めた。

 精子は、受精によって卵子と結合する際、化学的に大きな変動(DNAメチル化)を起こすが、このとき、有害な化学物質からの悪影響を非常に受けやすくなる、ということが知られている。

 人間は、生きていく中で、様々な化学物質に晒されている。とはいえ通常は、生体には「自分自身を安定して現在の状態に保つための力」(ホメオスタシス)が働いているので、ちょっとやそっとの有害物質と接触したくらいで体がどうにかなったりはしない。

 ただし、ホメオスタシスが弱まる、例外的な状況もある。そのひとつが、「精子と卵子が結合する瞬間」というわけである。

 世界的な傾向を見ると、男性の不妊症患者というのは増加しているらしい。研究チームによれば、その原因のひとつとして考えられるのは、地球環境の化学的汚染である。化学的汚染と一口にいっても多岐に渡るが、この研究では、PCBを取り上げている。

 PCB、Poly Chlorinated Biphenyl。ポリ塩化ビフェニル化合物の総称である。毒性が強く、その一部はダイオキシン類に指定されている。1960年代の日本を襲った食害事件、カネミ油症事件の原因物質としても悪名高い。

 かつて有用なマテリアルとして様々な用途に用いられたのだが、その後毒性が知られるに至り、ほとんど使用されることはなくなった。だが既に使用されてしまった分のPCB由来製品の数々が、経年劣化を生じ、各所で環境汚染を生じて問題となっている。

 さて。研究チームが、不妊症患者の体内のPCB濃度を調べたところ、PCBの濃度は年齢が高いほど高く、そしてPCB濃度が高い患者において精子の不活性度が高まることが分かった。つまり長期間に及ぶPCBへの暴露は、人類の男性全体に対して、不妊症の増加という悪影響を及ぼすのである。

 なお、研究の詳細は、英国のScientific Reports誌の電子版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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