九大らが数学と実験の融合研究でC型肝炎治療を推進
2017年2月12日 21:39
C型肝炎に対して、かつてはペグインターフェロンとリバビリンの併用療法という限られた治療法しかなかったが、現在では開発が進み10種類を超える薬剤が利用可能となってきている。しかし、治療が革新的に進歩したと同時に、現在では複数の薬を組み合わせる多くの治療選択肢の中から“最も良い組み合わせ”を見つけなくてはならないという新しい問題も浮かび上がっている。
今回、九州大学大学院理学研究院の岩見真吾准教授、国立感染症研究所の渡士幸一主任研究官は、金沢大学医薬保健学域の小泉吉輝氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の田中靖人教授、国立感染症研究所の脇田隆字副所長らとの共同研究により、C型肝炎治療薬の効果的な組み合わせを定める方法を開発することに成功した。研究グループは、様々な薬剤を用いたC型肝炎ウイルスの感染培養実験を実施し、得られた実験データをもとに数理モデルと呼ばれる数学的な方程式で解析し、コンピュータシミュレーションを援用する事で網羅的に薬剤組み合わせの特徴を解析した。
この研究で、現在治療に用いられている複数の薬剤の組み合わせによるウイルス抑制効果の強さを判定する手法を開発した。これにより、今後の治療選択肢として有望な3剤組み合わせでは、現在わが国で主流である2剤併用治療と比較して大幅に薬剤耐性ウイルスの出現リスクを下げられる事が示唆された。それぞれの薬剤の利点・欠点を補完した最適な組み合わせの薬剤開発によりC型肝炎治療が一層加速することが期待されるという。
なお、この研究の一部は、科学技術振興機構(JST)さきがけ研究、日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業に助成されたもの。 (編集担当:慶尾六郎)