3Dプリントで皮膚生成、6年以内に最初の身体器官が作られる可能性
2017年2月11日 21:57
3D生体プリント分野の技術が急速に発展している。3D生体プリントでは生体から採取した細胞をポリマーやゲルなどで培養、組織をスキャンして形成した形状物上に移植して繁殖させる。これまでこの分野では、軟骨や骨、筋肉、血管といった立体的な組織を再生外科手術に利用するための技術が開発され、実用に向けて研究が進められてきた。すでに鼻や耳の一部のような小さな構造をつくり出すことには英スウォンジー大学などにより成功しているが、このほどスペインの科学者が、3D生体プリントに関する目覚ましい研究成果を発表。移植可能な人間の皮膚の印刷が可能なデバイスを開発した。
このデバイスでは、培養した皮膚細胞、血漿を付着させ3D構造にプリントアウト、これを繁殖させることによって真皮や表皮など複数の層からなる皮膚の忠実に形成する。形成された皮膚は移植や実験での利用が可能とのこと。人工皮膚の人体への移植に関しては承認されていないが、マウスではその安全性が確認されている。同様に、マウスでの実験ではすでに3Dプリンタを使って血管や人工卵巣の形成に成功している。これ以外の臓器に関しても研究が進められているが、形状の複雑さから形成が難しい臓器もある、たとえば心臓は、平らで規則正しく組織が重なって形成されている皮膚に比べて3Dでの再現が難しく、生きた細胞を複雑な形状物に移植するにはさらなる研究と技術の進歩が必要だ。生体プリント分野のエコノミスト誌の調査によれば、肺や腎臓など比較的単純ないくつかの身体器官においては、今後6年以内に3Dプリンタによって形成される可能性があるとのこと。
3D生体プリント技術が発展することで、ドナーから、あるいは自分自身の体からの移植が必要なくなり、安全に移植できる身体器官・組織が形成できる。たとえばやけどなどで大がかりな皮膚組織の移植が必要な場合にも、体のほかの部分を傷つけることなく、数か月もあれば移植可能な皮膚が形成できる。事故などで失った組織の移植も可能になるとのことで今後の研究成果が期待される。(編集担当:久保田雄城)