民間中小病院、在宅医療に積極的なのは4割にとどまる
2017年2月11日 11:41
団塊の世代が75歳になり、医療・介護需要が最大化する「2025年問題」への対応が医療分野で叫ばれている。要介護者や慢性期の患者が地域で生活していくためには、医療や介護といった専門機関からの生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築が必須となる。また、現在は地域によって偏っている医療資源の地域格差をなくし、すべての人が安心して医療サービスを受けられる医療提供体制の構築が求められている。各都道府県では地域医療構想の策定とその実現が推進されており、今後増大する医療需要に対応するため、病床の機能分化と連携や、それによる療養病床以外で対応可能な患者に関しての在宅医療での対応促進など、医療資源配分の最適化を図る方針が厚生労働省により示されている。
こうしたなか、矢野経済研究所は民間中小病院を対象にアンケート調査を実施した。調査結果によれば「経営上の問題や課題では「職員の不足」が80.0%となり、ほかにも「建物の老朽化」で51.1%となった。一方で「入院患者の減少」というものも33.3%と一定数が課題として認識していることがわかった。限られた医療資源のなかで住民が安心して地域医療を受けるためには、在宅医療等の整備が不可欠となる。地域医療構想では構想区域ごとの医療需要から必要病床数を推計。都道府県間を含む構想区域間の医療提供体制の役割分担も検討されている。
地域医療構想の実現のためにはそれぞれの医療機関の自主的な取り組みや医療機関相互の協議の推進が欠かせない。しかし、中小民間病院に関していえばこうした取り組みに対してあまり積極的とはいえないようだ。同研究結果によれば、地域医療構想による病床機能区分については、「病床の機能区分の見直しは必要ない」との回答が62.2%にのぼり、「見直しが必要」と答えたのは28.9%だった。このことから、多くの民間中小病院では地域医療構想による病床機能区分への影響はあまり受けないと捉えているといえそうだ。また、在宅医療に対しても「積極的」な病院は42.2%にとどまり、「どちらともいえない」で33.3%、「在宅医療に関して消極的」が24.4%という結果となった。
地域医療構想に関しては、各都道府県が15年4月から策定を開始しているが、取り組みの重要性については中小民間病院にまでは浸透していないのが現状だ。「地域医療構想調整会議」などを通して広く啓蒙し、実現に向けて推進していくことが肝要だ。(編集担当:久保田雄城)