シャープの16年4~12月期、経営再建は次の「攻め」主体のフェーズへ
2017年2月5日 17:54
■鴻海(ホンハイ)との協業は計画以上に順調で、損益が大きく改善
2月3日、シャープ<6753>が2016年4~12月期(第3四半期)決算を発表した。売上高(1兆4912億円)は前年同期比で23.2%減。営業利益(189億円)は前年同期の290億円の赤字から黒字に転換。経常損益は152億円の赤字で、前年同期の528億円の赤字から赤字幅縮小。四半期純損益は411億円の赤字で、前年同期の1083億円の赤字から赤字幅縮小。第3四半期に連結ベースで120億円の減損損失(特別損失)を計上したが、業績は全体的に大きな改善をみせている。
減収の要因は北米で液晶テレビの製造事業から撤退したことや、スマホ向けの液晶パネルやカメラモジュールの需要減少の影響が出たこと、など。しかし損益ベースの採算改善が進み、セグメント別では10~12月期(第3四半期)にディスプレイデバイス事業が8四半期ぶりに営業黒字に変わり、「AQUOS」ブランドのテレビも、大型液晶パネルも、スマホ向け液晶パネルも営業黒字で、太陽電池を除く全事業が営業黒字化した。四半期個別にみると、営業損益は7~9月期(第2四半期)ですでに黒字転換したが、10~12月期(第3四半期)では最終損益も42億円の黒字に変わり、9四半期ぶりに黒字転換した。
決算記者会見で野村勝明副社長は、再建スポンサーの親会社、鴻海精密工業(ホンハイ)との協業が計画以上に順調に進み、コストの削減、物流体制の見直しなどの効果が業績にあらわれていると説明した。
■全ての事業部が黒字体質で揃い、来期以降「シャープの逆襲」の準備着々
2017年3月期の通期業績見通しは、売上高は500億円上方修正し2兆500億円で前期比16.7%減。営業利益は116億円上方修正し373億円(前期は1619億円の赤字)で、3期ぶりの黒字転換。経常損益は161億円上方修正し2億円の赤字(前期は1924億円の赤字)。当期純損益は46億円上方修正し372億円の赤字(前期は2559億円の赤字)。
減収にはなるが製品のコストダウン、構造改革に伴う経費削減の効果が当初の想定以上で、損益は大幅な改善を見込む。当期純損益は連結ベースで178億円の減損損失(特別損失)を計上しながら赤字幅を大幅に縮小。経営再建中なので期末配当、年間配当は無配になる見通し。円安進行で下半期の想定為替レートをドル円102円から110円に見直したが、為替変動の影響はニュートラルという。
8月に戴正呉現社長が就任してから加速をみせる鴻海(ホンハイ)主導のコストダウンで、営業損益については通期で99億円の押し上げ効果を見込んでいる。それは前期からの改善見込額1992億円の約5%にあたる。そんな直接的な効果の他に、再建スポンサーがついて取引先や消費者の不安心理が後退するような間接的な効果もある。野村副社長によれば現在の1~3月期で四半期ごとの売上高も増収に転換できる見通しという。来期以降については「どの事業部も黒字体質になってきた。構造改革から拡大路線に転換していく」と、明るい見通しを披露した。
「来期2018年3月期の最終黒字化」「2018年中の東証第1部復帰」を花道に社長職をバトンタッチする--それはかねてから戴社長が話す再建の青写真。主力の液晶テレビには「2018年までに世界販売台数1000万台突破」という大きな目標がある。1月には鴻海と共同で約8000億円を投資し、アメリカに液晶パネルの新工場を建設する構想も浮上した。
今まで抑えてきた開発投資もこれから増やしていくといい、有望な投資対象として、有機ELの開発投資、複合機事業のM&A投資、次世代テレビ「8K」放送の対応機器、モノのインターネット「IoT」技術への投資などを挙げている。それらは来期以降「シャープの逆襲」の攻勢に出る際、競争力のある頼れる武器になるだろうか?(編集担当:寺尾淳)