モバイル端末市場の成長と共に拡大する、サーマルプリンタ需要
2017年2月5日 10:25
矢野経済研究所の調査によると、2015年度のプリンタ世界出荷台数は1億350万台。金額では6兆2675億円と好調をキープしている。とくに、物流や品質管理、医療用途などのバーコードラベルプリンタや、レシートプリンタ、FAXなどに使用されるサーマルプリンタが、近年のモバイル端末市場の成長傾向とも相まって需要を伸ばしているようだ。
一般的に家庭やオフィスなどで使用されているインクジェットやレーザーのプリンタとサーマルプリンタとの最も大きな違いは、熱によって紙媒体に印字を行なうため、大きなトナーカートリッジを必要としないことだ。専用の感熱紙に印字する感熱式プリンタや熱転写プリンタなど、転写の方式はいくつかあるが、その中でも、トナーもインクも使わないダイレクトサーマルプリンターは小型化・軽量化ができ、低ランニングコストで使用できるという利点があるので、クレジット決算や公共料金の請求、訪問販売市場などで使用されることが増えている。
ロームや京セラといった日本を代表する電子デバイスメーカーもサーマルプリンタ市場には力を注いでおり、サーマルプリントヘッドの開発でしのぎを削っている。
例えば、ロームは1月30日、決済端末などのレシートプリンタに最適な、Li-ion電池1セル電源で駆動する、新構造サーマルプリントヘッド「KR2002-D06N10Aシリーズ」を発表している。同製品は、蓄熱層であるグレーズ設計の最適化と特殊低抵抗発熱体を採用することにより、蓄熱性を向上。さらにセラミック基板とプリント基板を組み合わせた新構造の開発を行うことで、従来の決済端末用のサーマルプリントヘッドで一般的だったLi-ion電池2セル駆動品と比較して印加エネルギー効率を約20%向上させ、ヘッド部の小型化にも成功したという。これにより、Li-ion電池1セルでも従来の2セル品同等の印字品位を確保できたそうだ。省エネに加えて、搭載のバッテリー数を削減できたことで、モバイル端末として小型のニーズも満たす製品であろう。
また、京セラも、優れた熱応答性がもたらす高品位な印字と、忠実な階調表現性をウリとする、高精度の薄膜プロセス方式で生産されたサーマルプリントヘッドを販売している。薄膜タイプのサーマルヘッドは厚膜方式に比べて腐食しやすいという声もあるが、同社ではヘッドが過酷な環境で使用されることを想定して、以前から「腐食に強いサーマルヘッド」の開発に取り組んでおり、耐腐食性が高いヘッド仕様もラインナップして支持を得ている。
日本国内のみならず、世界的に需要の高まるサーマルプリンタ市場において、日本メーカーが主導権を握れるのか、大いに期待したいところだ。(編集担当:松田渡)