川崎重工の16年4~12月期、低迷事業多い中有望製品も
2017年2月1日 21:14
■船舶やプラントの不振に円高の影響も尾を引いて減収減益決算
1月31日、川崎重工業<7012>が2016年4~12月期(第3四半期)決算を発表した。売上高(1兆430億円)は前年同期比で2.1%減、営業利益(228億円)は65.7%減、経常利益(230億円)は65.1%減。四半期純利益(179億円)は39.2%減。四半期純利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は85.5%で、それに関しては順調。
受注高は新造船需要の低迷による船舶海洋事業が大幅に減少し、前年同期に大口案件を受注したプラント・環境事業も減少した。売上高は為替の円高の影響や、前期の建設機械の譲渡による減収をプラント・環境事業の増収などで補って、全体としてはほぼ前年同期並みだった。利益面は円高の影響、船舶海洋事業の採算悪化、航空宇宙事業の減益などで利益3項目が全て減益になっている。ノルウェー向けの海洋開発支援船で約50億円、海外のLNGタンク事業で約50億円の追加費用を計上した。
セグメント別では、船舶海洋事業は新造船需要の低迷で受注高が大幅減、売上高は前年同期並み。営業損益は赤字。車両事業は海外向け受注が減少しても東京都交通局向けリニア式地下鉄車両を受注して受注は前年同期並み。売上高はアジア向けが減少し減収。営業利益は減益。航空宇宙事業は受注減、売上減、営業減益でふるわない。ガスタービン・機械事業は前年同期の航空エンジン分担製造品の新規プロジェクト参画の反動で受注減。売上高は前年同期並み、営業利益は航空エンジン関係の開発費償却負担増があり減益。プラント・環境事業は前年同期のゴミ処理関係の大口案件受注の反動で受注は大幅減、売上高は海外の化学プラントの工事が寄与して増収、営業利益はコスト増に伴う収益性の低下で減益。モーターサイクル&エンジン事業は先進国向け二輪車、四輪車が増えても汎用エンジン、新興国向け二輪車が減り、円高の影響も出て減収。営業損益は20億円の赤字だった。精密機械事業は、建設機械向け油圧機器、各種産業用ロボットが好調で受注増、増収、営業増益と好調だった。
■為替の円安進行を背景に通期の利益見通しを上方修正
2017年3月期の通期業績見通しは減収減益。受注高は700億円下方修正し1兆3200億円、売上高は100億円上方修正し1兆5200億円で前期比1.3%減、営業利益は60億円上方修正し400億円で58.3%減。経常利益は80億円上方修正し330億円で64.6%減、当期純利益は45億円上方修正し210億円で54.3%減。2円の期末配当、6円の年間配当の配当見込みは修正していない。前提となる想定為替レートは円安方向に見直し、ドル円は102円から110円に、ユーロ円は114円から120円に改めた。
受注の下方修正の理由は船舶海洋事業で新造船需要が依然低迷していること。売上の上方修正はプラント・環境事業の海外向けプラントの進捗率上昇や、建設機械向けの油圧機器、産業用ロボットの好調さが寄与している。利益の上方修正の理由はひとえに昨年秋からの為替の円安進行。川崎重工業は為替変動の影響を受けやすい製品のシェアが高いという特徴があり、航空機の機体も、エンジンなどの部品も、建設機械部品も二輪車もロボットも、円安の恩恵を受けて採算が好転した。
車両事業ではアメリカのNY州交通局から鉄道車両60両、約320億円を受注した。精密機械事業の産業用ロボットは、自動車工場や半導体工場など海外からの引き合いが強い一番の有望製品である。(編集担当:寺尾淳)