米控訴裁判所、米企業が国外サーバーに保存した情報の開示要求は無効
2017年1月29日 18:22
米連邦第2巡回区控訴裁判所全法廷は24日、米企業が米国外のサーバーに保存したデータを米国の捜査令状で開示させることはできないとする判断を支持し、米政府による全法廷での再審理請求を却下した(裁判所文書: PDF、Consumeristの記事、The Vergeの記事、Ars Technicaの記事)。 捜査令状は麻薬捜査に関連するもので、Microsoftに対して電子メールサービス利用者のアカウント情報や、送受信したメッセージの内容などの開示を求める内容だ。しかし、Microsoftは米国内のサーバーに保存されていた情報のみを開示し、アイルランドのサーバーに保存されている通信内容は開示を拒否している。 これについてニューヨーク南部地区連邦地裁は2014年7月、電子メールに対する捜査令状は文書提出命令と同様のもので、国外に保存されていても開示する義務があるとの判断を示した。しかし、連邦第2巡回区控訴裁判所が2016年7月、この捜査令状を規定するStored Communication Act(SCA)の条項は違法捜査からプライバシーを保護するためのものであり、米国外のサーバーに保存された電子的通信内容に対する捜査令状の発付は認めていないとの判断を示したため、米政府が全法廷による再審理を請求していた。 全法廷の判事8名による票決は4対4で、再審理の請求は却下された。SCAに基づく捜査令状が米国外で無効という点について異論は出ていないが、米企業が米国内の端末からアクセス可能な情報であれば、米国内に保存されているかどうかは関係ないという意見も出ている。再審理に賛成したDennis Jacobs判事は、携帯電話で自分の電子メールにアクセスできるなら、電子メールは自分のポケットの中に保存されているとも考えられると述べている。 ただし、犯罪行為と結び付けられる可能性が高いと下級判事が認めた電子的情報であっても、捜査機関が入手できる可能性が低くなることを懸念する意見は反対派からも出ている。また、SCAが発効したのは1986年であり、現代のテクノロジーに対応できないとの意見もみられる。これに対し米法務省では、判決内容やさまざまな意見を検討したうえで、今後の方針を決定するとのことだ。