深刻な国内のIT人材不足、83.0%の企業が「不足」
2017年1月28日 21:24
多様な産業でデジタル化が進展する結果、IT人材をめぐる熾烈な競争が生まれている。既に、国内のIT人材の不足は深刻だ。ガートナー ジャパンが国内で2016年12月に実施した調査では、「IT人材が不足している」と回答した企業は全体の83.0%に上り、さらに全体の20.4%が少なくとも現状の1.5倍の人数が必要であると考えていることがわかった。今後は、デジタル技術を用いた新分野での人材需要が増加する一方で、既存のIT人材のスキル転換は容易ではないため、ミスマッチに起因する質的な人材不足が顕在化するとガートナーでは予測している。
また、深刻な人材不足の問題とデジタル化への取り組みは、IT部門にIT組織設計の見直しを迫ろうとしている。こうした中、ロボットやスマート・マシンをIT組織の「一員」として採用する企業が徐々に増加するとガートナーでは予測している。ロボットやスマート・マシンが採用される分野としては、特にコグニティブ技術を活用できる分野やプログラム可能なプロセスなどが有望。現時点では、こうした技術とサービスに対する関心は高いものの、多くの組織はコストを重視している。ガートナーの調査では、「コスト面の有益性にかかわらず、新しい技術やサービスをシステム開発/運用面で積極的に導入したい」と考えているIT部門は約1割にとどまった。
ロボットやスマート・マシンの採用は、代替対象となる定常業務に従事している技術者にとっては脅威となり得るが、IT人材市場においては同時に、既存システムとの連携やソリューションの調整など、新しいスキルの需要が増加する。また、技術者の育成にもポジティブな効果が予想される。これまでは優秀な技術者ほど、現場での引き合いが強く、新しい役割へのシフトやステップアップが難しい傾向があった。優秀な技術者のノウハウや行動特性をソリューションによって再現することが可能になれば、IT人材の健全な育成を阻んできた構造的な障害を排除することも可能になるとしている。
日本国内におけるシステム開発需要が急増した結果、国内でのIT人材調達が困難になったIT部門の一部が、オフショアリングによる人材調達に本腰を入れて取り組み始めている。特に企業の認知度が低いなど、人材市場へのアピール力に欠けるIT部門や、グローバルにIT拠点を保有し、日本向けタスクもグローバル拠点に集約可能なIT部門を中心に、人材獲得を目的としたオフショアリングの活用が進んでいる。
一方、コスト削減を主目的としたオフショアリングは、現地におけるコストの急増、日本と比較した場合の品質と生産性の低さや改善スピードの遅さ、IT部門側の管理負担の大きさといった原因により、伸び悩んでいると推察される。実際にガートナーと顧客企業との対話では、疲弊したIT部門の間でオフショアリングの縮小を検討するケースが見られる。オフショア・サイトで一定量以上のリソース規模を維持し、IT部門側にプロジェクト管理スキルを備えたバイリンガル担当者を配置するといった前提条件を満たせないIT部門は、コスト削減効果を得ることが難しくなる。そのため、コスト削減を目的とするIT部門の割合は急速に低下し、人材獲得を目的とするIT部門の割合が急速に上昇するであろうとガートナーは予測している。(編集担当:慶尾六郎)