ビタミンDが脂質を抑制する機序が解明、メタボ予防に期待感
2017年1月28日 18:50
京都大学の研究グループは、ビタミンDが脂質の代謝を調整し、体内の脂質量を抑制する生理的なメカニズムの解明に成功した。
脂質の過剰摂取は現代文明の業病である。脂肪は本来、必要不可欠な栄養素であるのだが、重量あたりのカロリーが高く、またファストフードなどには過度に含まれており、メタボリックシンドローム(メタボ)、癌など、多くの疾患の元凶ともなる。
次にビタミンDについて解説しよう。ビタミンDには、ビタミンD2からD7までの6種類がある(ちょっとした科学史上の事情から、D1は存在しない)。ヒトにとっての栄養素として重要なのはD2とD3で、この2つの機能は同じだとも、D3の方が働きが強いともいわれる。また今回の研究と直接は関係ないが、骨の強化・維持に必要不可欠な栄養素である。
疫学的調査から、ビタミンDの摂取がメタボリックシンドロームや癌を抑制することが、経験的には知られていた。しかし、その原理は不明であった。それを明らかにしたのが、今回の京大の研究だ。
では詳細の説明に移る。ビタミンDは、SREBPなるものの働きに関与している、という。SREBPとは、Sterol Regulatory Element-binding Proteinの略で、遺伝子情報(DNA)というスタティック(静的)な司令塔部分からの脂質の生合成に関する指令を、生体内でダイナミック(動的)に処理するRNAという部分への情報の伝達を促進もしくは抑制する機能を持つ、タンパク質の一群である。
さらにざっくりと説明すると、つまり、ビタミンDを摂取すると生体内での「脂質を作り出せ」という命令系統は弱まり、逆にビタミンDが不足すると、その命令系統が強まるというわけだ。
この研究の応用としては、安全な人工ビタミンDの作成などに活用することが期待できるという。また、研究の詳細は、1月27日、アメリカの科学誌「Cell Chemical Biology」の電子版に掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)