処理速度トレーニングで認知力・抑うつ改善、東北大が専用ゲーム開発

2017年1月24日 12:16

 認知機能は加齢とともに衰えていくが、これにゲームを活用したトレーニングで対抗しようという試みが研究機関等でさかんに行われている。東北大学学際科学フロンティア研究所の野内類助教と加齢医学研究所の川島隆太教授を中心とする研究グループは、タブレットPCを活用した処理速度トレーニングゲームを開発し、無作為比較対照試験にて効果検証を行った。

 今回の検証の対象は、精神疾患や脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な高齢者(タウン誌広告で募集)72人。同研究グループ開発のタブレットPCゲームを4週間にわたり1日15分、週5回以上実施したところ処理速度トレーニングゲーム実施のグループは、クイズゲーム実施のグループと比較して、処理速度および抑制機能において高い点数をマークし、抗うつ気分の低減が見られた。同ゲームの開発応用による高齢者の認知機能や精神機能の改善ツールの展開が期待されるところだ。

 持続的なトレーニング効果を立証した研究では、スペインの国立遠隔教育大学のトリル博士らが2014年に実施したものがある。同研究では、健康な高齢者(平均年齢69.95歳)19人に、7~8週間かけて1回1時間のトレーニングゲームを計15回実施。結果としてトレーニングの回数が増えるごとに視空間のワーキングメモリや短期記憶の能力が著しく向上し、さらには3ケ月後にもトレーニングの効果は持続していたことが示された。

 上記のような成果の目覚ましい発表を頻繁に目にするようになった一方で、ゲームによるトレーニングの効果に一時的なものが多いことや、記憶や問題解決、学習能力といった一般的な認知機能の向上がみられないとの問題点も指摘されている。特に認知症に対する認知機能改善や予防効果をうたうトレーニングが氾濫しているが、わずかな効果をもって誇大に主張されることも多い。2010年には米国立保健研究所によって、ほとんどの脳トレでは効果に対する根拠が曖昧だと結論付けられている。トレーニングゲームによる認知機能・精神機能改善効果を示すために、大規模で長期間にわたる実証によるエビデンスの確立が求められている。(編集担当:久保田雄城)

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