【小倉正男の経済コラム】石原慎太郎元都知事の窮地~豊洲購入の賠償責任問題~
2017年1月24日 09:54
【東京都が卸売市場を所有する必要はあるのか】
■石原慎太郎元都知事の賠償責任
小池百合子都知事が、豊洲移転問題で、石原慎太郎元都知事の賠償責任について見直すと表明した。
石原慎太郎元都知事については、「東京都は豊洲の購入資金578億円全額を石原慎太郎氏に請求しろ」という住民訴訟が起こされていた。 東京都は、石原慎太郎元都知事に賠償責任はないという立場を採ってきたが、それを変更するかどうかを検討するとしている。
豊洲ではベンゼン、シアンなどの有害物質が検出され、移転のメドはまったく立っていない。豊洲には、水産物などの卸売市場の前提である「安全・安心」があるとはいえない。 東京都は、いわば豊洲という汚染された土地を購入したわけだが、そのおカネは税金であり、石原慎太郎元都知事としては相当な窮地に立たされている。
石原慎太郎元都知事からは、説得力のある説明や反論はまったくなされていない。税金を使い放題という調子で貪ってきたわけだが、税金なのだからその使いみちは説明する責任がある。
■所有してガバナンスがない、というのは最悪
税金といったものは、「親方日の丸」とまったく同じであり、下手に使おうが、無駄に使おうが、東京都が倒産するわけがない。使い方が鷹揚になる素地がある。
本来でいえば、いまでは東京都が水産物などの卸売市場を所有しているいわれはないのではないか。 監督権、チェックしたり指導したりといったガバナンスを所有していればよい。所有はしているが、ガバナンスがまるでないのでは税金を食うだけであり、何の意味もないどころか最悪である。
卸売市場は、民間に売却して任せて、東京都はそれを監督する。民間ならば、豊洲などの「安全・安心」がない土地にポンと578億円を支払うといったことなどなかったのではないか。
東京都が卸売市場などまで持っているから、いくら税金を集めてもさらに税金が必要になる。「市場長」などといったポストも必要になり、これも税金で賄うことになる。減税などということは間違っても出てこない。
■興味がある、興味がない、は通らない
豊洲の土地購入について石原慎太郎元都知事の次男・石原良純氏(タレント)が「羽鳥慎一モーニングショー」で何回も発言している。
「政治家・石原慎太郎を見ていると、興味のあることはやるけど、ないことは人に任せる。おろそかにしていた、そういう負の部分が大きくなって出てきた」 なるほど豊洲移転問題は、興味がなかったということのようだ。実態としては、そうだったのかもしれない。
しかし、興味がある、興味がない、そうしたことは何ほどの意味も持たない。 「石原銀行」(新銀行東京)は興味があったのではないか。「石原銀行」の損失も目も当てられない。尖閣諸島購入問題、これも興味があったのではないか・・・。
都知事であり、政治家であるというなら、もたらされた結果こそが問われる。 一歩下がっても、興味がある、興味がない、というのは一般の市民なら通る次元かもしれない。だが、都知事としては、そうだよね、と通すことはできないものに違いない。
(小倉正男:『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)