介護職の離職率はなぜ高い?常勤と非常勤で理由に違い
2017年1月22日 19:00
介護業界の人手不足が叫ばれて久しい。厚生労働省が発表した昨年11月時点の介護職の有効求人倍率は3.40倍で、全職種平均の1.31倍を大きく上回っている。いわゆる「団塊世代」が全員75歳以上になる2025年度には介護従事者が38万人も不足する恐れがあるとするデータもある。背景には介護業界を志す人の数が需要に追いついていないという事情があるが、このミスマッチはどこから起こるのだろうか。
介護職で人材が確保できていない理由の一つに、離職者の多さがあげられる。介護労働安定センターの調査によると、介護従事者が入社1年未満での離職する割合は40,2%、3年未満に広げると74.8%と、実に4人に3人が他業種へ流出している。その結果30歳未満の介護従事者は15年の調査で全体の約12%にとどまり、若手の人材不足が深刻になっている。辞めた理由は「他に良い仕事があった」「収入が少ない」「将来の見込みが立たない」などの回答が目立ち、職場環境と待遇に大きな問題があることがうかがえる。
しかしさらに掘り下げて見てみると、雇用形態によっても実情が多少異なっていることが分かってきた。スマイル・プラスカンパニーが現役の介護従事者を対象に行ったアンケートによると、常勤の33.3%、 非常勤の24.6%が「転職を検討している」と回答した。そして注目すべきはその理由だ。常勤の職員は「収入が少ない」「忙しすぎて心身ともに疲れた」「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満を持った」などをあげたのに対し、非常勤の職員は「同僚や上司など職場の人間関係に問題がある」という回答が一番多くなったのだ。この「同僚や上司」には残念ながらアンケートに回答した側の職員も含まれているだろう。待遇への不満や業務に忙殺されるストレスのしわ寄せが、本来職場の仲間であるはずの非常勤職員に押しつけられている・・・、という悲しい構図が浮かんでくる。この現状は「職場で重視することは」との質問に対して、常勤の回答トップが「賃金水準(64.1%)」、非常勤の回答トップが「職場の雰囲気(65.6%)」だったことにも裏付けられている。
さらに「職場の各制度に満足しているか」の質問に対して「不満」と答えた割合は常勤49.4%、非常勤37.7%だった。やはり常勤職員の強いストレスが表れている。例えば、日本介護クラフトユニオンの調査によると月給制の介護職員のうち47%が「残業時間を正確に申告していない」と回答している。介護業界の人材不足には。業務内容より前に雇用側の姿勢に問題や課題があることが浮き彫りとなった。(編集担当:久保田雄城)