豊洲新市場にて多量の有害物質が検出、どうなる築地移転問題
2017年1月19日 12:20
築地市場(中央区)からの移転が予定されている豊洲市場(江東区)で地下水の調査が行われ、基準値の実に79倍に及ぶ有害物質ベンゼンと、検出基準値がゼロ(つまり、微量でも検出されてはいけない物質)のシアンが検出された。検出された箇所は数十か所に上る。これにより、ただでさえ揉めに揉めている市場移転問題に、さらなる波紋が広がることとなった。
小池百合子東京都知事は、現段階で、「さまざまな調査や報告の結果を踏まえ、今夏に移転の是非について最終的な判断を下す」としている。
ベンゼンとは何か。ベンゼンは様々な工業用途に用いられる化学物質だが、継続的に吸引すると、白血病などを起こして死に至る。また、都市ガスを生成するときに副生物として生まれるため、都市ガス工場の跡地は深刻なベンゼンによる土壌・地下水汚染を起こすことが知られている。なお、豊洲には昭和30年代から60年代にかけ、大規模な都市ガス工場が存在していた。
まず間違いなくベンゼン検出の原因はその都市ガス工場なのであろうが、東京都が築地移転の5つの候補地の中から、「『用地』『交通』『商圏』の全ての条件を満たす場所は、豊洲地区以外にない」として決めた移転地が、食品に関する物流拠点を移転する場所としてほんとうに良かったのか、といった点にも疑問が出るかもしれない。
ともかく、今回、基準値を大幅に超過する検出結果が出たことで、「これまで行っていた検査は何だったのか?」という話にもなってきた。小池知事は、過去の調査結果についても逐一見直していく方針を固めたという。
だが、「移転はしません。築地市場をそのまま使います」という結論になったとして、それでめでたしめでたしで話が終わるのかというと、あいにくそうもいかない。行き先を豊洲にするかどうかはさておいて、築地からの移転そのものは、急務なのである。最大の原因は、施設の老朽化だ。築地市場が作られたのは1935年である。四分の三世紀以上が経過しているわけだ。これで問題が起こらないはずがない。天井が崩落する事故が多発しており、また、現代の物流事情に合わない部分が多々あって、どちらにせよ再整備は絶対的に必要なのだという。
築地市場それ自体を全面改築するというアイデアはもちろんとうの昔からあった。ただ、最大の問題は、「工事をしている間、代わりにどこで市場の営業を続けるのか?」ということである。工事には年単位の時間がかかることは確実だ。その間運営するための仮市場をよそに作るくらいなら、いっそ移転してしまった方が早い。そもそも、これが、市場移転構想の始まりだったのである。
結局、この問題はどうなるのであろうか?決定権を握るのは、先の都知事選において都民から全権を託された、小池知事その人である。託した以上は、もはや見守るしかない。しかし願わくば、できうる限り多くの人にとって望ましい結果になってほしいものである。 (記事:藤沢文太・記事一覧を見る)