IoT普及の鍵は通信技術、家電・通信各社が新たな取り組みへ
2017年1月18日 12:42
IoT向け通信技術が普及の兆しを見せている。常時小容量のデータ通信が発生するIoT機器では、従来の3G回線やLTE回線を活用すればコストが高くなってしまうほか、電力供給の面でも課題がある。このことから年額数百円程度の低コストと省電力を実現する通信技術、「LPWA」がIoT向けネットワークの最有力候補となっている。同規格は欧米を中心に展開され、日本では昨年11月に京セラコミュニケーションシステムが展開を開始した「SIGFOX」や、英ボーダフォンなど欧州系の通信事業者が標準化を急いでいる「NB-IoT」、鴻海精密工業が開発し、日本ではソフトバンクが連携して先行展開を進める「LoRaWAN」といったものが注目されている。
また、LPWAのひとつで、家庭用エネルギー管理システム機器-スマートメーター間など狭いエリア内での機器間通信を想定した「Wi-SUN」の機能を拡張した新規格「Wi-SUN FAN」の実用化が、産学連携で進められている。京都大学大学院情報学研究科らの研究グループはローム、日新システムズと共同で、この規格対応の無線機を開発した。複数台の無線機を経由して通信距離を延ばすマルチホップ機能を搭載しており、より広い範囲での通信を実現できる。
既存の技術のなかで、IoT向け通信規格として再注目されているものもある。電力線を利用して通信を実現する「PLC」のなかでも低電力、高効率伝送を採用した「HD-PLC」は、コンセントさえあれば通信が可能となる技術だ。同技術の普及に力を入れているのはパナソニックだ。同社は東京電力ホールディングスグループ、日立製作所と共同で、16年11月から一般住宅を対象としたIoT基盤の構築実験を開始。約100戸の住宅を対象に、家電製品ごとの電力使用状況や住宅内の温度などを測定してデータを収集する実験を通して家庭内ネットワークでの有効性を検証する。同技術では、従来通信距離が200~300メートルと狭かったのが課題だったが、端末を経由して別の端末に情報を伝送するマルチホップ機能が16年に追加され、数キロメートル先まで通信距離を延ばすことが可能となった。
こうしたIoT向け通信技術は、17年以降次々と社会実装されるとみられ、スマートシティーのインフラ構築への寄与が期待される。(編集担当:久保田雄城)