医療・介護への需要・関心高まるも、老人福祉事業の倒産は増加の一途
2017年1月18日 16:47
高齢者が増え続けることで医療・介護への需要・関心は年々高まっているが、現場を支えるスタッフの人員不足、報酬や保険料の改定などで収益が流動的となっている事業者は数多い。なかでも老人福祉事業者の倒産は増加の一途を辿っており、2018 年度の診療報酬・介護報酬の同時改定が両業界にどのような影響を及ぼすのか注目される。帝国データバンクは、2000年~2016年(17年間)の「医療機関」「老人福祉事業者」の倒産動向(法的整理を対象)について分析した。
それによると、2016年の医療機関の倒産(法的整理)は34件、負債総額は235億7100万円となり、2000年以降の17年間で件数は8番目、負債総額は7番目の水準となった。業態別の内訳は、「病院」が6件(負債総額181億900万円)、「診療所」が16件(同43億6400 万円)、「歯科医院」が12 件(同10 億9800万円)となり、態様別では「破産」が30件(構成比88.2%)、負債額別では 5億円未満の事業者が24件(同70.6%)を占めたほか、業歴別では「20~30年未満」の事業者が最多となった。
2016年の特徴として挙げられるのは、埼玉県厚生農業協同組合連合会(負債65億3300万円、埼玉県熊谷市、7月破産)、(医社)神戸国際フロンティアメディカルセンター(同42億8100万円、兵庫県神戸市、3月破産)、(医)武蔵野総合病院(同34 億円、埼玉県川越市、12 月民事再生法)の負債30億円を超える病院の大型倒産が3件発生し、医療機関の負債総額が6年ぶりに200億円を超えたこと。負債30億円超の病院の倒産は2014年8 月に民事再生法の適用を申請した(医)緑生会(同63億7900万円、千葉県我孫子市)以来だという。将来に向けた人口動態(都市部への人口・施設集中)の変化による経営二極化や医療事故による患者離れの恐ろしさを連想・実感させられた案件となった。
2016年の老人福祉事業者の倒産(法的整理)は91件となり、過去最悪だった2015年(58件)をさらに33件上回り(56.9%増)、2年連続で過去最悪を更新した。また、負債総額も104億9700万円と初めて100億円を突破し、過去最悪となった。91件の内訳をみると、負債額別では5億円未満が87件(構成比95.6%)、業歴別では5年未満が43件(同47.3%)、業態別では「訪問介護、通所介護サービス」が80件(同87.9%)を占めるなど、引き続き業歴の浅い小規模事業者が大半を占めている。
2000年4月の介護保険法施行を機に、介護サービス関連事業に新規参入する事業者や新設事業者が相次ぎ、訪問介護・通所介護の施設・事業所数は2万782(2001年)から4万357(2006年)にまで増加(厚生労働省調べ)。競争激化するなか、2006年4月に改正介護保険法が施行(介護報酬引き下げなど)されたことで経営環境が悪化する業者が増加し、2007 年以降の倒産件数急増につながった。近年はそうした状況に加え、労働環境・賃金問題などから人手不足に陥る施設の増加や2015年4月の介護報酬改定(総額で2.27%引き下げ)が大きく影響して業界内の淘汰をさらに加速させているとしている。(編集担当:慶尾六郎)